●概念
抗原と抗体が結合した免疫複合体の沈着と、この沈着によって引き起こされる補体による組織障害(GellとCoomsのIII型アレルギー)が中心。全身性の自己免疫疾患。
●疫学と成因
好発年齢は20-40歳台であり、男女比は1:10で若い女性が多い。患者の多くは妊娠可能な年齢の女性であることから、女性ホルモンと病因との関連が疑われている。一卵性双生児において一方がSLEである場合の他方のSLE有病率は50%を超えるとする報告があり、また、北米では黒人女性の方が白人女性より有病率が高いとされており、遺伝的素因の存在が疑われる。降圧薬ヒドララジン(アプレゾリン)、α-メチルドーパ(アルドメット)、抗不整脈薬のプロカインアミド (アミサリン)、抗てんかん薬のヒダントイン、抗精神病薬クロルプロマジン(ウィンタミン、ベゲタミン)など様々な薬剤を長期服用することにより薬剤性ループスと呼称されるSLEと同様の症状を惹起することがあることより、未だ特定されていない外的誘因の存在も懸念される。高齢者などSLE好発年齢をはずれてのSLE様病態の発症はまず薬剤性ループスを疑う。パルボウイルスB19感染症でもSLE様の症状を呈することがあり、小児~児童間で感染するリンゴ病(伝染性紅班)患者と接触がなかったか問診し、パルボウイルスB19に対するIgM抗体価を検討する。
●病態
多彩な自己抗体が検出されることが多いが、病態の中心は抗二本鎖DNA抗体による免疫複合体の形成と補体による組織障害である。組織障害の発生場所は個々の症例によって異なるが、”全身性”の名前のとおり、腎臓、皮膚、肺、脳など多様は臓器に障害が発生する。
●臨床症状
○皮膚粘膜症状
ループスエリテマトーデス、頬部紅斑 (蝶形紅斑)、円板状皮疹 (discoid lupus)、日光過敏、口腔内潰瘍、環状紅斑、凍瘡様皮疹、レイノー症状、リベドー疹、脱毛、深在性ループス
○関節炎
SLE発症時には多関節痛を自覚することが多いが、関節リウマチとは異なり骨のびらん・破壊を伴わない非破壊性関節炎である。したがって、原則的に時間が経過しても関節変形や強直は起こさない。例外的に、関節周囲の支持組織障害の結果、手指関節の亜脱臼あらわれるJaccoud関節症がある。この場合もレントゲン上では関節構造は破壊されておらず、関節リウマチによる変形とは異なる。
○漿膜炎
胸膜、心外膜、腹膜といった漿膜に炎症が発生し胸膜炎や心外膜炎をおこし、炎症性浸出液が貯留する例がある。SLEでは通常血清CRPは上昇しないが、こうした漿膜炎を生じた場合、例外的にCRPの上昇が観察される。胸部レントゲンでの胸水貯留像や心胸郭比の拡大、心エコーによる心嚢液貯留が確認され、腹水貯留では腹部膨隆が観察される。
○腎障害
腎障害は糸球体腎炎が基本である。シェーグレン症候群とは異なり、びまん性の間質性腎炎は少ない。症例ごとに様々な病理組織像がある。現在では国際腎臓学会2003年度分類(ISN分類)がもっとも標準的な分類である。腎炎発症の結果、1日尿蛋白3.5g以上のネフローゼ症候群を呈することがしばしばある。多くの場合、抗DNA抗体価は高く血清補体化は低値である。ループス腎炎はISN分類における腎組織分類に基づいて治療が選択されるため、腎生検による病理組織分類決定は強い禁忌がない限り行われることが望ましい。
○神経障害
SLEではしばしば痙攣や意識障害の症状が現れたり、統合失調症様症状を呈する神経障害 neuropsychiatric SLE(NPSLE)症例がある。末梢神経の障害がない場合 central nervous system lupus (CNS Lupus)という病名も用いられるが、両者の使い分けは必ずしも厳密ではない。血清中に抗リポゾームP抗体、髄液のIL-6上昇を認めることがあり、診断の補助となる。末梢血中に抗カルジオリピン抗体やループスアンチコアグラントが検出される抗リン脂質抗体陽性例では多発脳梗塞を示すことがある(APS合併例)。
○肺障害
しばしば間質性肺炎を合併する。混合性結合組織病や強皮症に比べると頻度は少なくなるが肺動脈高血圧症が観察される例もある。肺胞出血を経験することがあり、この場合予後不良であり積極的な治療が必要となる。
○肝障害
未治療例の多くでは肝機能障害を伴う。抗ミトコンドリアM2抗体陽性の胆汁うっ滞性肝硬変症や抗LKM-1抗体陽性の自己免疫性肝炎の合併もあるが、これらがない症例でも生化学データでのASTやALTといった肝逸脱酵素が上昇する。
○ループス膀胱炎
頻度は少ないが膀胱壁の線維化がおこり、膀胱容量が減少することがある。膀胱壁は肥厚しコンプライアンスが不良になる。1回尿量が150mL程度になり、著しい頻尿になる。
●検査所見
○血液異常
白血球減少(4,000/mm3未満)、リンパ球減少(1,500/mm3未満)、血小板減少(100,000/mm3未満)、溶血性貧血(網状赤血球増加を伴い、ハプトグロビン低下)が観察されるが、これらの事象はウイルス感染症でもしばしば発生しうる。発熱患者の採血結果において白血球減少がみられた時、安易にSLEの診断を誤って下すことを避ける目的でアメリカリウマチ学会1997年診断基準では、血球異常は2回以上観察されることという付帯条件が付記された(on 2 or more occasions)。
○検尿異常
ループス腎炎のACR criteriaでは、持続的尿蛋白>0.5g/日または3+以上、かつ/または 細胞円柱(RBC、hemoglobin、granular、tubular、mixed)でループス腎炎を定義する。持続的尿蛋白量は随時尿で蛋白/クレアチニン比>0.5でも可能。細胞円柱は活動性尿所見(非感染症下で>5 RBC/hpf 又は >5 WBC/hpf、又は赤血球円柱か白血球円柱を認める)でも可能。
○抗核抗体陽性
抗核抗体陽性のみで専門外来を紹介受診されることがあるが、抗核抗体陽性のみではSLEを示唆する訳ではなく、自覚症状、理学所見、その他の検査異常を参考にSLEを疑うことが大切である。peripheral(shaggy) typeのパターンは抗DNA抗体を反映している。
○自己抗体
抗2本鎖DNA抗体(抗ds-DNA抗体)は比較的疾患特異度が高いとされるが、抗1本鎖DNA抗体の場合は薬剤性ループスの可能性がある。抗DNA抗体以外に、抗Sm抗体、抗SS-A抗体、抗U1-RNP抗体、RF、抗カルジオリピン抗体、ループスアンチコアグラント、ACL-β2-GPIが陽性に検出されることがある。抗SS-A抗体はSLE以外にシェーグレン症候群の多くで検出され、抗U1-RNP抗体は混合性結合組織病や強皮症でも検出され、疾患特異度は低い。
○低補体血症
漿膜炎の合併がない場合、原則的に、SLE単独では補体低値やCH50低値を示すことが多く、正常値を超えて上昇することはない。免疫複合体がいずれかの組織に沈着すると補体が動員される。このため障害臓器での組織学検査では補体の沈着が観察される。腎生検におけるC1qの沈着はSLEに比較的特徴的である。病変局所で補体が消費されるため末梢血中ではC3、C4などの補体が減少する。補体を測定するときは必ずCRPも同時測定しておく。漿膜炎や感染症併発などでCRP高値の場合は補体低下やCH50低下が炎症による産生増加によって中和されてしまうためである。こうした炎症下では補体が正常値であっても補体が消費されていないとは言えない。
○陰性検査所見
SLEの検査上特徴的なものとして、発熱や腎炎などが顕著でもCRPなどの急性期蛋白質の上昇はみられず、こうした陰性所見もSLEを疑う根拠となる。例外は胸膜炎や心外膜炎など漿膜炎症状を呈した場合で、この場合はCRP上昇が観察される。ステロイドや免疫抑制剤使用時の感染症併発時にもやはりCRPは上昇する。
●生検による病理所見
皮膚生検検体を蛍光抗体で染めると表皮真皮境界部に免疫グロブリンの沈着を認めることがあり「ループスバンド」と呼ばれる。ループス腎炎を合併する時は、強い禁忌がない限り腎生検を行なう。これはループス腎炎の病理組織分類に基づいて治療方針を決めるためである。国際腎臓学会(ISN)によるループス腎炎の2003年分類を別に掲載する。
●診断: 全身性エリテマトーデス(SLE)の分類基準
Updating the American College of Rheumatology revised criteria (1997)
1頬部紅斑
2円板状皮疹
3日光過敏
4口腔潰瘍
5関節炎
6漿膜炎(胸膜炎、心膜炎)
7腎障害(尿蛋白、細胞性円柱)
8神経障害(痙攣、サイコーシス)
9血算異常(溶血性貧血、白血球・リンパ球減少、血小板減少
10免疫異常(抗DNA抗体、抗Sm抗体、抗リン脂質抗体)
11抗核抗体
* 上記4項目以上でSLEと分類する(出現時期は一致しなくともよい)
* Eng M. Tan, et al. The 1982 revised criteria for the classification of systemic lupus erythematosus. Arthritis Rheum. 25: 1271-1277, 1982
* Hochberg MC. Updating the American College of Rheumatology revised criteria for the classification of systemic lupus erythematosus. Arthritis Rheum. 40: 1725, 1997.
●治療
○薬物治療
治療の原則はステロイドである。臓器障害度、重症度に応じて投与量が決められるが、プレドニゾロン換算で0.5-1.0mg/kgで開始される。重症型ではメチルプレドニゾロン1000mg/day 3日間投与のステロイドパルス療法が選択される。腎病変など各臓器病変に対しては、その病理組織型にしたがって免疫抑制剤の追加など治療薬剤を選択する。腎生検病理組織において半月体形成を伴うようなびまん性ループス腎炎(Ⅳ型)や係蹄璧にdouble trackやspike形成を示す膜性ループス腎炎(V型)では免疫抑制剤が必要である。Ⅳ型ループス腎炎では経静脈的cyclophosphamide大量投与の反復が有効であるとされているが、月経停止や泌尿器科領域の発癌性の問題が確認されており、米国ではMMFが使用されることがある。ループス腎炎に対する2012年ACR推奨を別に掲載する。
○アフェレーシス治療
何らかの理由でステロイド剤投与や免疫抑制剤の投与が積極的にできない場合、アフェレーシス治療が行われることもある。新鮮凍結血漿を用いて単純に血漿を入れ替える血漿交換療法、血漿成分から一定の分子サイズのものを除去し残りを返血と混合させる二重膜濾過法、吸着カラムを用いた選択的抗DNA抗体吸着療法などがある。いずれもループス腎炎やCNSループスに対して保険適応が認められている。アフェレーシス治療は組織障害に繋がる自己抗体を血液中から一時的に除去するのが狙いであり、抗体産生を抑える効果は持ち合わせていないが、ステロイドと免疫抑制剤を併用していると、アフェレーシス治療をきっかけに病勢が好転することをしばしば経験する。
○生物学的製剤
関節リウマチの治療で劇的な効果を示している生物学的製剤の使用もSLEに対して検討されている。自己抗体を産生する抗体産生細胞はB細胞から成熟することから、B細胞除去療法が考案される。キメラ型抗CD20抗体rituximabはB細胞上に発現するCD20分子を標的に細胞障害性に働く抗体薬品である。SLE加療に有効であるが、脳内のJCウィルスの活性化など致死的な有害事象の発生報告があり、SLEへの臨床試験は中止されている。次いでB細胞の生育に必要なB lymphocyte stimulator (BLyS)がB細胞表面受容体に結合する点を阻害する完全ヒト抗BlyS抗体belimumabが開発され、米国ではSLEへの使用についてFDAの認可がおりており、本邦での承認が待たれる。樹状細胞上のBLySと同様の働きを持つa proliferation inducing ligand (APRIL)の両方に結合できるtransmembrane activator and CAML interactor (TACI)にヒトグロブリンを融合させ安定化と半減期の延長を図ったfusion proteinであるataciceptも開発されており、臨床応用が待たれる。SLE患者血球の解析からSLE病態にIFNの関与が考えられており、これに対する抗体sifalimumabやrontalizumabなども開発されている。
参考:大阪大学医学部 免疫アレルギー内科
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