悪性リンパ腫

●概念
悪性リンパ腫は、単一ではなく、多様な病型のリンパ系組織のがんの総称である。日本人の2000年における年間推定患者数は約1万3000人、発生率は10万人に約10人程(欧米人は10万人に約20人)で近年増加傾向にある。リンパ腫は全身に発生するというその性質上、治療を行ってもがん細胞が完全に消えたことを証明することはできない。そのため「完治」という表現はせず、腫瘍を検出できなくなった時点で「緩解(寛解)」したと表現する。これは、同じ血液のがんである白血病と同様の扱いである。緩解に至ってもがん細胞が残存していることがあって、再発するケースもある。
原因はわかっていないが、ウイルス説・カビ説・遺伝説などがある。小児白血病、絨毛癌などと並んで、悪性腫瘍の中では、比較的抗がん剤が効きやすいとされる。抗がん剤は活発な細胞を攻撃する為、一般に、がんの進行が早い悪性度の高いものほど抗がん剤に対する感受性が強く、進行の遅い低悪性度は感受性が低いとされている。
●症状
頸部、鼠径部、腋窩などのリンパ節が腫大することが多い。リンパ節が1cmを超え肥大が進行したり、腫瘤の数が短期間で増加する場合は注意が必要である。各臓器に発生するリンパ腫の場合にはレントゲンや内視鏡による検査で発見される場合もある。また全身の倦怠、発熱、盗汗、体重減少などがみられる場合もあり、これらの全身症状はB症状と呼ばれる。B症状は、予後不良因子とされている。進行すると全身の衰弱、DIC、多臓器不全などから死に至る。
●検査
血液検査(CRP、LDH、IL-2、フローサイトメトリー、HTVL-1、EBV、B型肝炎、C型肝炎)
ピロリ菌検査
造影CT検査
内視鏡検査
Gaシンチ
PET
骨髄穿刺
確定診断はリンパ節生検を行うことにより病理組織分類や遺伝子異常の検索もおこなうことがある。針生検での診断は難しいため、リンパ節を切り取って組織を調べることが多い。
●病期分類
Ann Arbor分類
I期:
1つのリンパ節領域または1つのリンパ組織(脾臓、胸腺、扁桃腺)の病変(I期)、あるいは1つの非リンパ性臓器の限局性病変(IE期)
II期:
横隔膜を境にした同側、2つ以上のリンパ節領域にわたる病変(II期)、あるいは1つの非リンパ性臓器への限局性病変を伴う1つ以上のリンパ節領域の病変(IIE期)
III期:
横隔膜の両側にわたるリンパ節領域(III期)、リンパ節以外の臓器又は部位の限局的侵襲を伴うもの(IIIE期)、脾臓の侵襲を伴うもの(IIIS期)、その両者を合併しているもの(IIIES期)
IV期:
1つ以上のリンパ節以外の臓器又は組織へのびまん性の浸潤で、リンパ節腫大を問わない
●予後因子
国際予後因子(international prognosis index:IPI)が有名である。予後因子の数で患者を層別化し、予後を判定する。予後因子として、年齢、PS、LDH、節外病変数、病期 が挙げられている。標準治療(CHOP療法など)を行った場合の予後は、高リスク群では5年生存率が25%程度、低リスク群では25%程度と考えられる。 あくまで統計学的な予後であり、実際は患者毎に予後は異なる。
・国際予後因子(全年齢)(International Prognostic Index:IPI)
年齢≧61歳
節外病変≧2ヵ所
LDHが高い
病期≧III期
日常活動性(PS) ≧2
低危険群:0~1
低中危険群:2
高中危険群:3
高危険群:4~5
高危険群では、治療をしても5年生存率が25%弱である。現在は坑CD20モノクローナル抗体などの新しい薬剤の併用により、全体的に生存率は向上していると考えられる。
・濾胞性リンパ腫国際予後因子(Follicular Lymphoma International Prognostic Index:FLIPI)
年齢≧61歳
リンパ節病変≧5ヵ所
LDHが高い
病期≧III期
ヘモグロビン<12g/dl
低危険群:0~1
中危険群:2
高危険群:3~
●組織学的分類
病型を大別すると、ホジキンリンパ腫(Hodgkin’s lymphoma,HL、あるいは Hodgkin’s disease, HD)と非ホジキンリンパ腫 (non Hodgkin’s lymphoma, NHL) がある。欧米ではホジキンリンパ腫が多数を占めるが、日本人のホジキンリンパ腫は約10%であり、日本では殆どが非ホジキンリンパ腫で占めている。病型によって治療方針及び予後が大きく異なるので、リンパ腫では病型を診断することが重要である。非ホジキンリンパ腫は進行度合により、年単位で進行する低悪性度、月単位で進行する中悪性度、週単位で進行する高悪性度にわかれる。低悪性度では濾胞性リンパ腫、MALTリンパ腫、中悪性度ではびまん性大細胞性B細胞性リンパ腫、未分化大細胞型リンパ腫、高悪性度ではリンパ芽球性リンパ腫、バーキットリンパ腫などがある。
●治療法
初回標準治療としてCHOP療法、R-CHOP療法、Highdose CHOPなど、サルベージ療法としてDeVIC療法、ICE療法などがある。 放射線照射を併用する場合もある。最近よく使われる薬として、CD20が陽性の悪性リンパ腫に有効なリツキサンがある。
1.ホジキンリンパ腫
・限局期(臨床病期IあるいはII)の場合
病理組織学的分類が(1)で、全身症状(B症状:発熱、体重減少、夜間寝汗)がなければ放射線療法が基本となる。
・進行期(臨床病期IIIあるいはIV)の場合、B症状を伴う場合、
病組織学的分類にかかわらず、化学療法が主となる。発症時に非常に大きな腫瘤があった場合や、化学療法後に腫瘤が残存した場合には、放射線療法が追加されることがある。ホジキンリンパ腫に対する代表的な化学療法は、ABVD療法である。
2.低悪性度群リンパ腫
MALTリンパ腫ではピロリ菌感染があればピロリ菌除菌を行う。
濾胞性リンパ腫やMALTリンパ腫の臨床病期IあるいはIIの限局期の場合には、原則として放射線療法が行われる。発症場所が複数あり、かなり距離が離れている場合には進行期と同じ対応となることがある。臨床病期IIIおよびIVの場合には、経過観察、化学療法、抗CD20モノクローナル抗体(リツキサンなど)、圧迫症状を呈する部位への放射線療法等の選択肢がある。また最近は、濾胞性リンパ腫の予後因子であるFLIPIを用いて治療方針を決めることも多くなってきている。
3.中悪性度群リンパ腫
びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫などの臨床病期IおよびIIのときには化学療法単独か、化学療法と放射線療法の併用が行われる。臨床病期IIIおよびIVでは化学療法が主体となる。代表的な化学療法はCHOP療法で、最近ではCHOP療法などの化学療法にリツキサンが併用されることが多い。
4.高悪性度群リンパ腫
リンパ芽球型リンパ腫は、急性リンパ性白血病とほぼ同じ化学療法が行われる。中枢神経浸潤を来す可能性が高いので、化学療法剤の髄腔(ずいくう)内投与が予防的に行われる。バーキットリンパ腫には有効な化学療法が開発されている。予後不良であることが予測されるときには、造血幹細胞移植を選択することもある。
悪性リンパ腫診療ハンドブック/南江堂

¥3,990
Amazon.co.jp
悪性リンパ腫診療スキルアップ/中外医学社

¥5,670
Amazon.co.jp

コメント

タイトルとURLをコピーしました