★更年期障害
●概念
更年期は、女性の一生の中で性成熟期(生殖期)から老年期(非生殖期)への移行期に当たる。日本人は平均50.54歳で閉経するため、一般的には閉経前後の5年間に相当する45歳から55歳を指すことが多い。この時期、加齢に伴って性腺機能が低下し、卵巣機能の衰退から閉経となる。更年期障害は、この閉経周辺期に現れる多種多様な症候群をいい、器質的な変化によらない自律神経失調症を中心とした不定愁訴を指す。更年期女性の約80%が症状を訴えるとされ、さらにその内50%は日常生活に何らかの弊害をきたし、更年期障害として治療を要す。
●症状
(1)血管運動神経系の障害(のぼせ、ほてり、発汗、動悸、手足の冷えなど)
(2)精神・神経系の障害(不眠、不安、憂鬱、興奮しやすい、頭痛など)
(3)知覚神経系の障害(手足のしびれ、蟻走感、感覚の鈍化など)
(4)運動器系の障害(肩こり、腰痛、関節痛など)
(5)泌尿生殖器系の障害(膣の乾燥感、排尿障害など)
他に皮膚の変化などが認められる。
●検査
血中のエストラジオール(E2)濃度が10pg/ml未満で、FSH(卵胞刺激ホルモン)が40mIU/ml以上の場合に強く疑う。
女性ホルモンの測定値は、時期により変動するので数回測定して判定する。
卵巣が働いている状態:閉経状態
LH 3~10:20以上
FSH 3~10:20以上
E2 30以上:30未満
月経がある状態ではE2は周期により変動するため、FSH、LHがより重要である。FSHが10以上であれば卵巣機能低下を表し、FSHが20以上であればほぼ閉経と考える。これだけではっきりしない場合はAMH(抗ミュラー管ホルモン)という卵子の残存数を反映するというホルモンを調べることもある。
●更年期指数
欧米ではクッパーマン更年期指数がしばしば用いられているが、項目が多くて使いづらいため、簡略更年期指数(SMI、小山)がよく用いられている。
・簡略更年期指数
点数:強・中・弱・無
1.顔がほてったり、のぼせたりする。10・6・3・0
2.汗をかきやすい。10・6・3・0
3.腰や手足が冷えやすい。14・9・5・0
4.息切れ、動悸がする。12・8・4・0
5.寝付きが悪い、眠りが浅い。14・9・5・0
6.怒りやすく、イライラすることが多い。12・8・4・0
7.ゆううつになることが多い。7・5・3・0
8.頭痛、吐き気、めまいがある。7・5・3・0
9.疲れやすいですか。7・4・2・0
10.肩こり、腰痛、手足の関節に痛みがある。7・5・3・0
判定:51点以上で更年期障害の可能性あり。
●更年期における月経異常
1.月経周期が短くなり、頻回となりやすい。FSHが高値となり、卵胞の発育が促進され、黄体期が短縮するため月経周期が24日以下(頻発月経)となることが多くなる。
2.不規則な出血が断続しやすくなる。卵胞数が減少し、FSHがさらに高値となるが、卵胞の反応性が悪くなり、途中で発育が停止するようになり閉鎖するため、更年期出血(機能性出血)をきたすようになる。念のため子宮体癌のスクリーニングを受ける必要がある。
3.月経の間隔が間延びするようになる。さらに卵胞の発育に多くの日数を要するようになるため、稀発月経となる。
4.1年間月経が来なくなり、閉経と判断される。さらに卵胞数の減少と反応性の低下が著明となり、FSH・LHが上昇するが、ついに卵胞発育が全く認められなくなる。
●鑑別
・甲状腺機能亢進症・低下症
ほてり、のぼせがあるときは甲状腺機能亢進症を、疲れやむくみがあるときは甲状腺機能低下症を疑う。
・精神疾患(うつ病、心気症、不安障害など)
仮面うつ病は全身倦怠感や肩こりなどの身体的症状が表に現れ、更年期障害と区別することが難しいことがある。うつ病では、午前中の方が抑鬱症状が強い特徴があり、朝すぐに起きれませんか?朝刊を読むのがおっくうではないですか?の質問に「イエス」の場合は、仮面うつ病を疑う必要がある。抑鬱状態のさらに詳しく評価するためには、下表のようなSDS(Self-rating Depression Scale)を用いることもある。
・SDSによる抑鬱状態の評価
点数:たまに、ときどき、よく、ほとんどいつも
1.気が沈んで、憂うつだ 1234
2.朝方はいちばん気分がよい 4321
3.泣いたり、泣きたくなる 1234
4.夜よく眠れない 1234
5.食欲はふつうだ 4321
6.性欲がある 4321
7.やせてきたことに気がつく 1234
8.便秘している 1234
9.ふだんよりも動悸がする 1234
10.何となく疲れる 1234
11.気持ちはいつもさっぱりしている 4321
12.いつもとかわりなく仕事をやれる 4321
13.落ち着かず、じっとしていられない 1234
14.将来に希望がある 4321
15.いつもよりいらいらする 1234
16.たやすく決断できる 4321
17.役にたつ、働ける人間だと思う 4321
18.生活はかなり充実している 4321
19.自分が死んだ方が他の者は楽に暮らせると思う 1234
20.日頃していることに満足している 4321
判定:合計点が50点以上で抑うつ状態の疑い
・膠原病
・脳腫瘍
●治療の選択
更年期障害治療の薬物療法としては、ホルモン補充療法(hormone replacement therapy : HRT)と漢方療法がよく用いられ、精神・神経症状には自律神経調整薬、抗不安薬、抗鬱薬など向精神薬の処方が有効とされる。
また、適度な運動や生活環境の見直しも有効である。
●治療中止時期
更年期障害の持続期間は、通常1~2年、長くても2~3年で終わるもので、一生続くものではなく、必ず治る。HRTの中止時期については、HRTの使用期間はできるだけ短期間が推奨されているため、更年期障害が完治した場合は中止することが原則である。しかし、その他の効果、骨粗鬆症の予防や自律神経障害に対しては継続することがある。
●HRT療法
・検査
血圧、身長、体重、血液検査、子宮頸がん・子宮体がん検査、乳房検査
投与前検査する。
投与中には年1~2回検査する。
投与中止後5年までは1~2年毎検査する。
・エストロゲンチャレンジテスト
本格的なホルモン補充療法に入る前に2週間程度を目処に行われる試験的なエストロゲン投与(エストロゲンチャレンジテスト)を行い、長くても2ヶ月間投与して症状が改善しなければ他の病気を考える。
・子宮摘出後の場合、子宮があるが短期間行う場合
エストロゲンのみ補充する単独投与法
1.持続的投与法
持続的にエストロゲンを投与
2.間欠的投与法
エストロゲンを25日服薬し、5~7日休薬する
・子宮があり、閉経前の場合
エストロゲンとプロゲスチンを補充する周期的併用療法(定期的な性器出血あり)
1.周期的投与法
エストロゲンを22~25日服薬する。
プロゲスチンをエストロゲン開始12日目から12~14日間併用する。
その後5~7日休薬する。
2.持続的投与法
エストロゲンは持続内服する。
プロゲスチンは14日のみ内服する。
・子宮があり、閉経後の場合
持続的併用投与法(開始後のみ性器出血あるが徐々に減少)
エストロゲン及びプロゲスチンの服用を併用する。
・エストロゲン製剤
エストラーナ 1枚 隔日貼付
ディビゲル 1包 連日塗布
ジュリナ錠 0.5mg 1~2錠 分1
プレマリン錠 0.625mg 1錠 分1
・プロゲスチン製剤
プロベラ錠 2.5mg 2~4T 分1(持続的併用投与法では1T)
デュファストン錠 5mg 2T 分1(持続的併用投与法では1T)
・エストロゲン・プロゲスチン配合剤
メノエイドコンビパッチ 週2回(月と木、水と土など) 1回1枚貼付
ウェールナラ配合錠 1錠 分1 連日
●HRT療法の副作用
・乳癌・子宮体癌
検査が必要。
5年以上投与しない。
・性器出血
持続併用投与を開始した当初の1~2ヶ月は約80%の人が出血を経験するが、そのまま服用を継続すれば徐々に出血の頻度は低下し、1年後には約20%程度に落ち着く。
性器出血が続く場合は、プレマリンを半量に減量して毎日服用するか、プレマリン1錠を1日おきに服用するか、エストリール2錠/日に変更すると改善する。あるいは周期的投与法に変更する。
定期的に子宮体癌の検査を行う。
・悪心・嘔吐
エストロゲンによる悪心・嘔吐であれば、経口剤を経皮吸収エストラジオール製剤に変更する。ただし、プロゲストーゲン製剤でも悪心・嘔吐が起こることがあり、症状が続くようなら投与量を調節する。通常数日で慣れてくることが多いため、しばらく様子を見る。
・乳房緊満感・乳房痛
症状が強い場合は、エストロゲン製剤の投与量を調節する。
●抗不安薬
メイラックス錠(1mg) 2錠 分2
デパス錠(0.5mg) 3錠 分3 食後
リーゼ
セルシン
セレナール
●漢方薬
当帰芍薬散 1日7.5g 分3 食前(虚証)
桂枝茯苓丸 1日7.5g 分3 食前(実証)
加味逍遙散 1日7.5g 分3 食前(精神症状を伴うとき)
桃核承気湯 1日7.5g 分3 食前(のぼせがひどいとき、便秘を伴うとき)
自律神経失調症状に対して
半夏白朮天麻湯 1日7.5g 分3 食前
苓桂朮甘湯 1日7.5g 分3 食前
●湿布
肩こり・腰痛に対してはHRTは奏効しない。
●睡眠薬
マイスリー錠 1日5~10mg 分1 就寝前
ドラール錠 1日15~30mg 分1 就寝前
●抗うつ剤
SSRIやSNRIを使用する。
トレドミン錠(25mg) 3錠 分3 食後
パキシル
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