甲状腺腫瘍

●甲状腺の良性腫瘍
男女比は1対10で、女性に多い。症状は甲状腺腫大のみであることがほとんどである。
・単純性びまん性甲状腺腫
思春期女性にみられることが多く、成長すると目立たなくなる。甲状腺ホルモン投与によりTSHを低下させれば縮小することがある。外科的適応はない。
・腺腫様甲状腺腫(腺腫様結節、結節性甲状腺腫)
甲状腺の一部が腫大して多発性に結節病変が発生する。。良性のことが多いが、超音波検査で経過を見ていく。腫瘍増大など悪性が疑われる場合は生検する。
・プランマー病(中毒性単結節性甲状腺腫)
甲状腺腫瘍が甲状腺ホルモンを過剰に分泌している状態。血液検査でFT4↑、FT3↑、TSH↓、サイログロブリン↑、123Iあるいは99mTcシンチグラフィーで結節に一致した集積像を認める。外科的切除やPEIT(経皮的エタノール注入療法)を行う。
・甲状腺嚢胞
甲状腺内に嚢胞ができる。腺腫様甲状腺腫の一部に嚢胞ができたものが多い。初発時に疼痛を伴うこともある。超音波検査で診断し、吸引し細胞診を行う。数回吸引すると消失することが多い。
・濾胞腺腫
ゆっくりと発育していく腫瘤。日本人にかなり多く発生する。超音波検査で経過観察する。悪性の甲状腺濾胞癌との区別が難しい場合があり、被膜浸潤、脈管侵襲、転移、腫瘍の大きさが4cm以上、超音波検査で腫瘍の内部が充実している、経過観察中に腫瘍が増大する、腫瘍が気管や食道を圧迫する、腫瘍が甲状腺ホルモンを過剰に分泌する(血液中のサイログロブリンの値が1000ng/ml以上)とき、悪性の濾胞癌を疑う。
●甲状腺の悪性腫瘍
甲状腺腫瘍の約20%は悪性腫瘍である。甲状腺の悪性腫瘍は進行が遅く、予後良好なことが多い。
・乳頭癌
甲状腺癌の8割以上を占める。濾胞上皮細胞由来。進行が遅く、おとなしい。進行すると、リンパ節腫瘍、呼吸苦、嗄声などの症状が出る。治療は甲状腺切除術。乳頭癌の10年生存率は90%を越える。2~5%に家族性に乳頭癌が発症する。
・濾胞癌
甲状腺癌の8%を占める。濾胞上皮細胞由来。進行は遅く、おとなしい。しかし肺や骨などに転移することがある。治療は甲状腺切除術。10年生存率は84%と高い。
・髄様癌
甲状腺癌の1.5%を占める。カルシトニンを分泌するC細胞由来。2/3は散発性だが、1/3は遺伝性でRET遺伝子の変異があり常染色体優性遺伝する。髄様癌の他に褐色細胞腫や副甲状腺機能亢進症を合併することがある。血液検査でカルシトニン↑、CEA↑。手術は甲状腺全摘出術。
・未分化癌
甲状腺癌の1%を占める。高齢者に多い。乳頭癌や濾胞癌が未分化癌に転化する。突然甲状腺の腫瘤が急速に腫大し、疼痛や呼吸困難、嗄声などを伴うことがある。未分化癌は非常に進行が早く、診断がついてから半年以内に半分が亡くなる。甲状腺全摘出術及び放射線療法、化学療法を行う。
・悪性リンパ腫
慢性甲状腺炎(橋本病)から発生する。60歳~70歳代の女性に多くみられる。化学療法と放射線療法を行う。
・甲状腺の微小癌
大きさが1cm以下の小さな癌。乳頭癌の微小癌については進行が極めて遅いため、経過観察でよい。進行が認められたら手術を行う。
●甲状腺機能亢進症、甲状腺中毒症
・バセドウ病
腫大した甲状腺から過剰に分泌された甲状腺ホルモンによる症状を呈する。頻脈、眼球突出、動悸、多汗、体重減少、振戦などの症状が出現する。血液検査でFT4↑、FT3↑、TSH↓、TSH受容体抗体 (TRAb)陽性を示す。無痛性甲状腺炎との鑑別ではシンチグラフィーでバゼドウ病は集積を認めるが、無痛性甲状腺炎では集積を認めない。抗甲状腺剤の内服を行う。
・無痛性甲状腺炎
無痛性甲状腺炎は何らかの原因によって甲状腺の細胞が破壊され、甲状腺ホルモンが血中に漏出され、一時的に甲状腺ホルモンが増加する。自然治癒するが、その後甲状腺機能低下症になることがある。初めは動悸や体重減少などの甲状腺ホルモンが多いための症状が現れ、約1ケ月で症状はなくなり、その後甲状腺ホルモンが少なくなり、浮腫や体重増加などが現れる。数ケ月以内に甲状腺機能は正常化し、症状はなくなることが多い。稀に低下の状態が続く場合がある。
・亜急性甲状腺炎
亜急性甲状腺炎は甲状腺の組織が炎症で破壊され、甲状腺ホルモンが血液中に漏出され、甲状腺ホルモンが増加する。甲状腺が硬く腫脹し、疼痛も出現する。1~2ヶ月で自然治癒する。
●甲状腺機能低下症
・慢性甲状腺炎(橋本病)
橋本病で甲状腺機能低下症を来すことが多いが、甲状腺機能に異常を認めないことや一時的に低下しても回復することがある。成人女性の約3~10%を占める。浮腫、体重増加などの症状を呈する。甲状腺ホルモン剤を内服する。
●甲状腺の感染症
・急性化膿性甲状腺炎
細菌感染による甲状腺やその周囲の急性炎症が起こり、甲状腺が腫脹し、疼痛・発熱が生じる。12歳以下の小児に多く、90%以上が左側に起こる。抗生物質の投与や切開排膿で改善する。繰り返す場合、瘻孔があれば手術で摘出する。
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