
頭痛の患者の中で片頭痛患者は多い。軽症から重症まで幅広く、中には日常生活に支障が出る片頭痛患者もいる。トリプタン製剤が著効する。
●疫学
成人の1割弱(8%)が片頭痛もち。
女性に多い(男性の4倍)。
片頭痛は生理や排卵と関連して現れることが多く、妊娠中は片頭痛が減る。
思春期ごろから多くなり、60歳頃には減る。片頭痛の最盛期は30歳代。
片頭痛の1/4は子供のときからすでに始まっている。ほとんどが30歳までに発病している。
片頭痛を起こしやすい体質は遺伝する。母親が片頭痛だと子どもの半数に片頭痛が現れる。
●症状
・性状:脈打つように「ズキンズキン」あるいは「ガンガン」、「ドクンドクン」と痛む。痛みがひどくなると拍動感がなくなり、持続的な痛みとなる。片頭痛の半分は、拍動感は感じない。
・部位:側頭部~眼部に起こる。ひどくなると頭全体が痛む。4割は頭の両側が痛む。後頭部が痛む片頭痛もある。
・程度:日常生活がとても続けられないほどの強さで、仕事や家事が手につかず、できれば横になりたいと感じる。ひどいと寝込んでしまう。
・時間:起こり方は夕立のように発作的に起こる。片頭痛は4~72時間持続する。
・頻度:月に1~2回、少なくて年数回、多いときで週に1回程度、繰り返し起こる。月経前後に起こりやすい。エストロゲンが低下すると片頭痛が誘発される。片頭痛は緊張から開放されてホッとしたとき、生理や空腹時に起こりやすい。妊娠中は片頭痛が起こりにくい。更年期はホルモン機能が不安定となり片頭痛を起こしやすい。経口避妊薬は、前兆(閃輝暗点、星型閃光等)を伴う片頭痛の患者には、脳血管障害が発生しやすくなるため投与しない。
随伴症状:しばしば吐き気や嘔吐、下痢、ふわふわするなどの症状を伴う。片頭痛の最中は光や音に過敏となる。光がまぶしくて仕方がなくなる。まわりの音や声ががんがんと頭に響く。臭いにも敏感になる。光や音の過敏のために、発作中は暗い静かな環境を好む。ちくちく感が顔、腕または脚に現れ、移動し、横断する。やがてしびれ感となり、最高1時間持続する。発語、作文、思考が困難となる。片頭痛患者の75%に首のこりがあり、片頭痛が起こる前に肩こりがひどくなってくる。
・増悪因子:階段の昇降など日常的な動作により頭痛が増悪する。マッサージや入浴、運動は片頭痛を悪くさせる。
・前兆:片頭痛の約5分の1が前兆のある片頭痛で、前兆のうち最も多いのが閃輝暗点。視界にチカチカした光が現れ、これが拡大していくにつれ、元のところは見えにくくなる。前兆は約20~30分(10~60分)続き、前兆が終わるころから頭痛が襲ってくる。
・予兆:片頭痛発作の予兆は数時間~1日または2日前から発生し、けだるい感じ、考えがまとまらない、こり、光または音に対する過敏、はきけ、かすみ目、あくび、顔面蒼白などが出現する。
●片頭痛の診断基準
A.いままでB~Eを満たす頭痛が5回以上の発作があった
B.頭痛発作が4~72時間持続する
C.次のうち、少なくとも2項目を満たす
1.片側の頭痛
2.ずきんずきんする頭痛
3.かなり強い頭痛(日常生活が妨げられる)
4.階段の昇降など日常的な動作により頭痛が増悪する
D.発作中、次のうち1項目を満たす
1.吐き気か嘔吐
2.光過敏と音過敏
E.二次性頭痛(「悪玉頭痛」)を否定できる
「前兆を伴う片頭痛」の場合は閃輝暗点が2回以上あれば片頭痛と診断できる
●二つ以上あてはまったら、片頭痛の可能性
1.脈にあわせて「ズッキン、ズッキン」と痛む。
2.痛みは頭の片側のときが多い。
3.強い痛みが数時間から3日程度続く。
4.仕事や日常生活に支障をきたす。
5.体を動かしたり、力んだりすると、痛みがひどくなる。
6.吐き気がしたり、吐いてしまうことがある。
7.音や光に敏感になり、周りがうるさかったり、まぶしい場所に出ると、痛みがひどくなる。
8.頭痛の直前に視野の周辺にチカチカしたまぶしいギザギザの線が現れる。
9.週末やストレスから解放されたとき、月経前後に痛むことが多い。
●片頭痛を見分けるためのポイント
両側の頭痛や拍動感を伴わない頭痛は片頭痛でないと誤診されがち。
以下がポイントとなる。
1.反復性の頭痛
2.月に何回か、ときどき起こる頭痛。毎日の頭痛ではない
3.頭痛のないときは、ふつうの生活ができる
4.日常生活や動作に影響がある頭痛
5.仕事・勉学や家事などの日常生活に支障がある
6.動くとガンガン響いてつらいので、休むか、横になりたい頭痛
7.悪心・嘔吐
8.今までに吐き気がしたり吐いたりしたことがある
9.悪心・嘔吐がなくとも、強い光や音につらさを覚える
●片頭痛のスクリーナー(片頭痛の簡易問診票)
過去3ヵ月にあった頭痛について
1.歩行や階殿の昇降など日常的な動作によって頭痛がひどくなることや、あるいは動くよりじっとしている方が楽だったことはどれくらいあったか?
2.頭痛に伴って吐き気がしたり胃がムカムカすることがどのくらいあったか?
3.頭痛に伴ってふだん気にならない程度の光がまぶしく感じることがどれくらいあったか?
4.頭痛に伴って臭いが嫌だと感じることがどれくらいあったか?
1~4の質問に「なかった」、「まれ」、「ときどき」、「半分以上」の4段階に分けて、2項目以上で「ときどき」あるいは「半分以上」と回答した場合を「陽性」と判定する。
4項目中2項目以上陽性の場合は、片頭痛である確率は90%以上。
●原因
・三叉神経血管説
何らかのきっかけにより、血管の周りの三叉神経が刺激され、三叉神経の終末から痛み物質(P物質、CGRP)が血管に放出される。
その結果、血管の拡張と炎症がおこり、頭痛が起こる。
きっかけはストレスからの開放、生理、人ごみ、まぶしい光、ワイン、チョコレート、チーズ、柑橘類、ナッツ、カフェイン、狭心症の薬、低血糖、空腹、騒音など。
片頭痛は脳波異常率が高い(30~60%)という数字が報告されている。発作性異常波が多い。片頭痛患者では脳の血管運動性の不安定性・過敏性が存在し、これが脳波異常の発生にも関係がすると推測されている。
過呼吸により賦活されやすい。
●治療
・トリプタン製剤(イミグラン、ゾーミッグ、レルパックス、マクサルト)の積極使用。トリプタン製剤はセロトニンの1B/1D受容体に選択的に作用し、拡張した血管を収縮させ、血管の炎症を鎮めることにより、頭痛を抑える。狭心症では投与できない。エルゴタミン(その類似薬)を内服している人は24時間は併用できない。トリプタンはイミグラン、ゾーミッグ、レルパックス、マクサルトなどがある。トリプタンは錠剤の他に、口腔内で溶ける製剤(ゾーミッグとマクサルト)、点鼻液・注射(イミグランのみ)もある。吐き気がひどい場合は、トリプタンの注射や点鼻液が威力を発揮する。口腔錠も使える。片頭痛は鎮痛薬を早めに内服する必要がある。頭痛が本格化してからでは鎮痛薬は効かない。頭痛がつらいからと毎日のように鎮痛薬を飲むと、かえって頭痛がこじれてしまうため、月10回までにする。
・軽症片頭痛は鎮痛薬。
・制吐薬(ナウゼリン)を併用する。
・片頭痛発作が月に2回~6日以上ある場合に予防療法を併用する。2~3か月程度の服用しないと効果は現れない。ロメリジン(ミグシス、テラナス)、バルプロ酸(デパケン、セレニカ)、ベラパミル(ワソラン)、インデラル、呉茱萸湯、ビタミンB2など。緊張型頭痛を合併する場合、トリプタノール10~30mg/日程度、SSRIを考慮。
・ズキズキ痛む場所を冷やす。
・少量のカフェインを摂取する。カフェインは血管収縮作用がある。飲み過ぎると逆に頭痛が強くなることがある。
・甘いものを摂取する。片頭痛は低血糖で引き起こされることがあり、飴など甘いものを摂取すると頭痛が楽になることがある。
・寝る。薄暗くした静かな部屋で休む。
・規則正しい生活をする。朝食を必ず摂る。人混みは避ける。寒暖の差をなくす。
・マグネシウムを多く摂ると片頭痛の予防効果がある。ひじきや海藻類、黒豆、ココアなど。
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