漢方薬~分類別

  1. ●瀉心湯類(しゃしんとうるい)
    1. ・半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)14
    2. ・生姜瀉心湯(しょうきょうしゃしんとう)
    3. ・甘草瀉心湯(かんぞうしゃしんとう)
  2. ●参耆剤(じんぎざい)
    1. ・補中益気湯(ほちゅうえっきとう)41
    2. ・十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)48
    3. ・人参養栄湯(にんじんようえいとう)108
    4. ・帰脾湯(きひとう)65
    5. ・加味帰脾湯(かみきひとう)137
  3. ●人参湯類(にんじんとうるい)
    1. ・人参湯(人参湯)32
    2. ・大建中湯(だいけんちゅうとう)100
    3. ・四君子湯(しくんしとう)75
    4. ・六君子湯(りっくんしとう)43
    5. ・茯苓飲(ぶくりょういん)69
    6. ・桂枝人参湯(けいしにんじんとう)82
    7. ・呉茱萸湯(ごしゅゆとう)31
    8. ・炙甘草湯(しゃかんぞうとう)64
    9. ・清暑益気湯(せいしょえっきとう)136
    10. ・加味帰脾湯
    11. ・帰脾湯
    12. ・十全大補湯
    13. ・人参養栄湯
    14. ・補中益気湯
  4. ●柴胡剤(さいこざい)
    1. ・小柴胡湯(しょうさいことう)9
    2. ・大柴胡湯(だいさいことう)8
    3. ・柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)10
    4. ・柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)11
    5. ・柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)12
    6. ・四逆散(しぎゃくさん)35
    7. ・柴苓湯(さいれいとう)114
    8. ・抑肝散(よくかんさん)54
    9. ・抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)83
    10. ・柴陥湯(さいかんとう)73
    11. ・柴朴湯(さいぼくとう)96
    12. ・十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)6
    13. ・小柴胡湯加桔梗石膏(しょうさいことうかききょうせっこう)109
  5. ●半夏剤(はんげざい)
    1. ・半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)14
    2. ・半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)16
    3. ・茯苓飲合半夏厚朴湯(ぶくりょういんごうはんげこうぼくとう)116
    4. ・小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)21
    5. ・二陳湯(にちんとう)81
    6. ・半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)37
    7. ・二朮湯(にじゅつとう)88
  6. ●苓朮剤(りゅうじゅつざい)、利水剤(りすいざい)
    1. ・茯苓飲(ぶくりょういん)69
    2. ・五苓散(ごれいさん)17
    3. ・猪苓湯(ちょれいとう)40
    4. ・五淋散(ごりんさん)56
    5. ・五積散(ごしゃくさん)63
    6. ・胃苓湯(いれいとう)115
    7. ・啓脾湯(けいひとう)128
    8. ・真武湯(しんぶとう)30
    9. ・治頭瘡一方(ぢづそういっぽう)59
    10. ・小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)21
    11. ・二朮湯(にじゅつとう)88
    12. ・抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)83
    13. ・苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)39
    14. ・防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)20
  7. ●駆瘀血剤(くおけつざい)
    1. ・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)25
    2. ・桂枝茯苓丸加よく苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん)125
    3. ・桃核承気湯(とうかくじょうきとう)61
    4. ・当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)23
    5. ・加味逍遥散(かみしょうようさん)24
    6. ・通導散(つうどうさん)105
  8. ●補血剤
    1. ・七物降下湯(しちもつこうかとう)46
    2. ・きゅう帰膠がい湯(きゅうききょうがいとう)77
    3. ・疎経活血湯(そけいかっけつとう)53
    4. ・当帰飲子(とうきいんし)86
    5. ・温清飲(うんせいいん)57
    6. ・温経湯(うんけいとう)106
    7. ・四物湯(しもつとう)71
    8. ・大防風湯(だいぼうふうとう)97
    9. ・女神散(にょしんさん)67
  9. ●ごん連剤
    1. ・三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)113
    2. ・黄連解毒湯(おうれんげどくとう)15
    3. ・三物黄ごん湯(さんもつおうごんとう)121
    4. ・柴胡清肝湯(さいこせいはいとう)80
    5. ・黄連湯(おうれんとう)120
    6. ・清上防風湯(せいじょうぼうほうとう)58
    7. ・荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)50
  10. ●附子剤(ぶしざい)
    1. ・真武湯(しんぶとう)30
    2. ・麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)127
    3. ・桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)18
    4. ・八味地黄丸(はちみじおうがん)7
  11. ●竜骨牡蠣剤
    1. ・桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)26
    2. ・柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)12
  12. ●理気剤
    1. ・平胃散(へいいさん)79
    2. ・香蘇散(こうそさん)70
    3. ・参蘇飲(じんそいん)66
  13. ●地黄丸類
    1. ・八味地黄丸(はちみじおうがん)7
    2. ・六味丸(ろくみがん)87
    3. ・牛車腎気丸
  14. ●麻黄剤(まおうざい)
    1. ・麻黄湯(まおうとう)
    2. ・麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)
    3. ・麻杏薏甘湯(まきょうよっかんとう)
    4. ・葛根湯(かっこんとう)
    5. ・小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
    6. ・麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)
  15. ●桂枝湯類(けいしとうるい)
    1. ・桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)
    2. ・小建中湯(しょうけんちゅうとう)
    3. ・桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)
    4. ・桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)
    5. ・葛根湯(かっこんとう)
  16. ●白虎湯類
    1. ・白虎湯
    2. ・白虎加人参湯
    3. ・白虎加桂枝湯
  17. ●大黄剤(承気湯類)
    1. ・乙字湯
    2. ・通導散
    3. ・潤腸湯
    4. ・大黄甘草湯
    5. ・防風通聖散
    6. ・麻子仁丸
    7. ・治打撲一方
  18. ●石膏剤
    1. ・白虎加人参湯
    2. ・釣藤散
    3. ・消風散
    4. ・辛夷清肺湯
    5. ・木防已湯
  19. ●桂麻剤
    1. ・桂枝加芍薬湯
    2. ・桂枝加芍薬大黄湯
    3. ・小建中湯
    4. ・黄耆建中湯
    5. ・当帰建中湯
  20. ●その他の漢方薬
    1. ・酸棗仁湯
    2. ・半夏厚朴湯
    3. ・桂枝加竜骨牡蛎湯
    4. ・抑肝散
    5. ・麦門冬湯
  21. ●気剤(きざい)
  22. ●気虚
  23. ●起立性調節障害
    1. 関連

●瀉心湯類(しゃしんとうるい)

黄芩(おうごん)と黄連(おうれん)を主薬とする処方群である。胸やみぞおちのつかえがある人(心下痞硬)を目標としている。胃腸機能の低下、胸やけ、食欲不振、嘔気などに用いられる。

・半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)14

軽い吐気や嘔吐、食欲不振、下痢、胃腸炎、時に発熱を伴う、腹中雷鳴、胸やけ、胃部つかえ感、胃もたれ、腹満感、おくび、口内炎、二日酔い、神経症、ストレス性胃炎、過敏性腸症候群など。腹力中等度前後かそれ以上。白苔。

・生姜瀉心湯(しょうきょうしゃしんとう)

乾姜を減らし生姜を加味している。嘔吐が激しいとき。

・甘草瀉心湯(かんぞうしゃしんとう)

甘草を増量している。消化管全体が虚し下痢が続く場合および精神不安を伴う場合に用いる。

●参耆剤(じんぎざい)

人参(にんじん)と黄耆(おうぎ)を主薬とする処方群である。補剤として、胃腸機能が低下し、疲労感、倦怠感を訴える慢性疾患に用いる。参耆剤は総合的に生命活動の根源的エネルギーである気が不足した状態に対する治療薬である。心下痞硬を認める場合用いる。

・補中益気湯(ほちゅうえっきとう)41

虚弱で疲れやすく胃腸の働きが衰え、四肢倦怠感著しく食欲不振などの症状が持続的に存在する慢性疾患に用いられる。感冒などの病気後の食欲不振・倦怠感・微熱・気力低下、食欲低下、胃腸虚弱、全身倦怠感、気力低下、夏負け、多汗症、脳卒中後遺症、脱肛、子宮脱、インポテンツ。腹力中等度以下。

・十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)48

病後・術後の体力回復や増強、消化機能改善に用いられるが、特に皮膚の枯燥や血虚の兆候、貧血が鑑別のポイントとなる。補中益気湯に貧血の適応が加わっている。術後の食欲低下・気力低下・貧血、食欲低下、気力低下、貧血、顔色不良、疲労倦怠感、寝汗、手足や腰の冷え、皮膚乾燥。腹力中等度以下。

・人参養栄湯(にんじんようえいとう)108

食欲低下や気力低下に用いられるが、十全大補湯に呼吸器症状や精神症状の適応をを加えたもの。病後の食欲低下・気力低下、食欲低下、気力低下、貧血、顔色不良、疲労倦怠感、寝汗、手足や腰の冷え、呼吸器疾患、咳が長引く、精神機能低下、認知症、不眠、不安、健忘。腹力中等度以下。

・帰脾湯(きひとう)65

貧血、顔色不良、不眠症、疲れやすい。腹力中等度以下。

・加味帰脾湯(かみきひとう)137

帰脾湯に柴胡、山梔子などの精神安定、抗うつ作用のある薬味を加えたもの。貧血、顔色不良、顔面蒼白、神経症、焦燥感、心悸亢進、不眠症、体力低下、気力低下、食欲低下。腹力中等度以下。

●人参湯類(にんじんとうるい)

人参(にんじん)を主薬とする処方群である。人参は健胃、強壮作用、免疫賦活作用などを有し、虚証の治療に重要な生薬であり、使用目標は胃腸の気を補い、消化機能低下や冷えを改善するものと、共通している。心下痞硬を認める場合用いる。

・人参湯(人参湯)32

胃腸虚弱、嘔吐、軟便、胃痛、腹部の冷え、冷え性、息切れ、倦怠感、食欲不振、腎機能低下、妊娠悪阻(胸やみぞおちにつかえ感があり嘔吐が止まらないもの)などに用いる。また、口中に薄い唾液がたまって気持ちが悪い場合にも用いられる。腹力中等度以下。

・大建中湯(だいけんちゅうとう)100

血流を増し、消化管を刺激し、体を温め、消化管の緊張を調節するなどの作用があり、冷えによる腹痛、腹部膨満感がある場合に用いる。イレウス、便秘、下腹部痛など。

・四君子湯(しくんしとう)75

胃腸虚弱で胃内停水があり、食欲不振で虚証で気力・体力が衰えた場合に用いる。慢性胃炎、胃もたれ、嘔吐、下痢、食欲低下、気力低下。腹力中等度以下。

・六君子湯(りっくんしとう)43

四君子湯に陳皮(ちんぴ)と半夏(はんげ)を加えたものであり、応用範囲は四君子湯よりも広く、胃のもたれやうつ状態の強い人に用いる。慢性胃炎、胃もたれ、嘔吐、食欲低下、元気がない、疲れやすい、気力低下、めまい、動悸。腹力中等度以下。

・茯苓飲(ぶくりょういん)69

吐き気や胸やけ、胃もたれ、げっぷ、食欲不振などの症状があり、胃腸内にたまったガスを容易に排出できない場合に用いる。腹力中等度前後。

・桂枝人参湯(けいしにんじんとう)82

胃腸虚弱、下痢しやすい、腹部の冷え、頭痛、のぼせ、動悸。腹力中等度以下。

・呉茱萸湯(ごしゅゆとう)31

嘔吐、手足の冷え、頭痛。反復する頭痛、嘔吐。片頭痛。腹力中等度以下。

・炙甘草湯(しゃかんぞうとう)64

動悸、息切れ、易疲労感、体力低下。腹力中等度以下。

・清暑益気湯(せいしょえっきとう)136

暑気あたり、夏負け、食欲低下、疲労倦怠、下痢が続く。腹力中等度以下。

・加味帰脾湯

・帰脾湯

・十全大補湯

・人参養栄湯

・補中益気湯

●柴胡剤(さいこざい)

柴胡(さいこ)黄芩(おうごん)の二味を主薬とする処方群。熱性疾患が少陽病期になると、胸部、胸脇部、心下部にかけての、いわゆる半表半裏(はんぴょうはんり)の部分を中心とした疾病がおこる。柴胡剤はこの時期の使用目標となり、往来寒熱(おうらいかんねつ)、胸脇苦満(きょうきょうくまん)を中心に、口苦、白苔、食欲不振、胃腸機能低下、めまいなどの諸症状に用いる。

・小柴胡湯(しょうさいことう)9

口が苦い、風邪が長引く、風邪3~5日目、咳、痰、慢性気管支炎、肺炎、慢性胃腸炎、慢性肝炎、食欲低下、産後回復不全。腹力中程度。インターフェロンと併用禁。

・大柴胡湯(だいさいことう)8

胃痛、腹部膨満、食道ヘルニア、胃酸過多症、嘔気、嘔吐、食欲不振、胆石、黄疸、肝機能障害、便秘、肥満、高血圧、肩こり、糖尿病、蕁麻疹、癇癪、脳卒中後遺症、神経症、不眠症、いらいらしやすい、憂鬱。腹力中等度以上。上腹部が張る、堅い。

・柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)10

小柴胡湯の適応でかつ頭痛、悪寒、胃痛を伴うもの。風邪2~3日目、食欲低下、倦怠感、胃十二指腸潰瘍、肝機能障害、肺炎、胆石、膵炎。腹力中等度以下。

・柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)11

神経症、不眠症、のぼせ、手足の冷え、汗、口渇、疲れやすい、気持ちが高ぶる、動悸、腹力中等度。臍上悸。

・柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)12

高血圧、動脈硬化症、腎臓病、蛋白尿、驚きやすい、気分が沈みがち、不眠症、夢を見やすい、動悸、不安、うつ状態、夜泣き、てんかん、インポテンツ、冷え症、神経質、ヒステリー。腹力中等度以下。臍上悸。

・四逆散(しぎゃくさん)35

小柴胡湯と大柴胡湯の中間証に用いられる。柴胡、芍薬、枳実、甘草を含み、黄芩が含まれていないが、柴胡剤に分類する。膿性痰、くしゃみ、嘔気、胃痛、下痢しやすい、神経質、手足が冷えやすい、ゆううつ、いらいら、ヒステリー、易興奮性、気管支炎、アレルギー性鼻炎、急性胃炎、慢性胃炎、胃潰瘍、胃酸過多症、胆石、神経症。腹力中等度前後。

・柴苓湯(さいれいとう)114

小柴胡湯の消炎作用と五苓散の利水作用を併せ持っている。水様下痢、嘔吐、口渇、急性胃腸炎(水様性下痢、尿量減少、発熱)、浮腫。腹力中等度前後。

・抑肝散(よくかんさん)54

不眠症、神経症、神経が高ぶりやすい、怒りやすい、易興奮性、いらいらしやすい、夜泣き(怒りっぽい、眠りが浅い、疲れやすい)、小児疳症(いらいらして怒りやすい、落ち着きない)。腹力中等度以下。

・抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)83

抑肝散に二陳湯を加え、抑肝散の状態が進行し、衰弱が加わった状態。神経が高ぶる、怒りやすい、せっかち、歯ぎしり、めまい、肩こり、頭痛、不眠症、神経症、夜泣き(抑肝散に悪心・嘔吐など衰弱兆候の加わったもの)、小児疳症(抑肝散に衰弱兆候の加わったもの)。腹力中等度以下。臍上悸。胃内停水。腹部陥没。痩せ型。左腹直筋の上半分の緊張。

・柴陥湯(さいかんとう)73

小柴胡湯に小陥胸湯を合方した方剤。咳、咳で胸痛、急性気管支炎、慢性気管支炎。腹力中等度以上。

・柴朴湯(さいぼくとう)96

小柴胡湯と半夏厚朴湯の合剤。抗炎症、鎮咳、倦怠感の改善、精神安定などの効果を有する。感冒の後半、気管支炎(咳嗽、発熱、食欲低下を伴うもの)、湿性の咳が強い、神経質、喘息非発作時、咽喉の刺激感、神経症。

・十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)6

蕁麻疹、急性湿疹、麦粒腫、水虫

・小柴胡湯加桔梗石膏(しょうさいことうかききょうせっこう)109

急性扁桃腺炎、反復性扁桃腺炎、咽喉痛

●半夏剤(はんげざい)

半夏剤は半夏を主構成生薬とする処方群で、半夏には上部消化管の湿を除き(燥湿)、気を下すことで悪心、嘔吐を緩解させる働き(降逆止嘔)がある。生姜は半夏の刺激性を緩和する目的で配剤され、止嘔の作用を増強する。苓朮剤が全身性の水滞に対応するのに対し、半夏剤は胃部から突き上げてくるような吐き気、悪心、めまい、頭痛、くしゃみ、水様性鼻汁などの上半身の水分の停滞や代謝異常に起因する症候に適応し、口渇や下痢をともなわないのが特徴である。

・半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)14

軽い吐気や嘔吐、食欲不振、下痢、胃腸炎、時に発熱を伴う、腹中雷鳴、胸やけ、胃部つかえ感、胃もたれ、腹満感、おくび、口内炎、二日酔い、神経症、ストレス性胃炎、過敏性腸症候群など。腹力中等度前後かそれ以上。白苔。

・半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)16

何かにひっかかかっているような咳、喉から胸に何かがつかえているような感、喉頭つかえ感、嘔吐しやすい、気を病みやすい、神経過敏、嗄声、動悸、めまい、疲れやすい、気がふさがって晴れない、不眠症、神経質、神経症、妊娠悪阻(めまい、不眠症を伴う)、腹力中等度前後。

・茯苓飲合半夏厚朴湯(ぶくりょういんごうはんげこうぼくとう)116

喉頭つかえ感、胸苦しさ、おくび、神経質、抑うつ、気分がふさぐ、訴えが多岐にわたる、妊娠悪阻(気分がふさぐ、喉頭違和感がある)、急性胃炎、慢性胃炎、不安神経症、腹力中等度前後。

・小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)21

嘔吐、食物が胃に収まらない、妊娠悪阻

・二陳湯(にちんとう)81

嘔気・嘔吐(心下が気持ち悪い、めまい、動悸、頭痛を伴う)、水滞。腹力中等度以下。

・半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)37

胃腸虚弱症、疲れやすさ、頭痛、めまい、食欲低下、易疲労感、冷え症、起立性調節障害、水滞。腹力中等度以下。

・二朮湯(にじゅつとう)88

五十肩、頸肩腕症候群、肩や腕の痺れ・痛み、腹力中等度前後。胃内停水。筋肉にしまりなくブクブクの水毒性体質。

●苓朮剤(りゅうじゅつざい)、利水剤(りすいざい)

苓朮剤は茯苓、猪苓、沢瀉、朮(白朮、蒼朮)などの利水薬を中心に構成される利水剤である。漢方では、体をめぐる水のアンバランスを病気の背景に存在する重要な因子として捉えている。水が体全体をうまく循環できず水が停滞した状態を水滞(水毒)と呼び、浮腫、口渇、鼻汁、痰、頭痛、めまい、動悸、嘔吐、胃部振水音、尿量減少(小便不利)、多尿(小便自利)、下痢、関節痛、全身倦怠などのさまざまな症候と関係する。脾胃の減退は水分の吸収低下を招き、消化管内の余分な水分貯留による嘔吐、胃部振水音、下痢、さらに体内の水分不足による口渇や尿量減少などの典型的な水滞の症状があらわれる。水分の代謝・排泄に深く関わる腎と肺(五臓)の働きが低下することで、血管や組織における水部の停滞や偏在が起き、浮腫、関節痛、尿量異常などの症状を示す。これら水滞の改善に用いられる利水剤は、利尿剤(尿細管からの再吸収を阻害し、体の水分量の多少に関わらず尿量を増やす)と異なり、水分の足りないところには供給し、多すぎるところからは利尿によって排除する特徴をもつ。

・茯苓飲(ぶくりょういん)69

吐き気や胸やけ、胃もたれ、げっぷ、食欲不振などの症状があり、胃腸内にたまったガスを容易に排出できない場合に用いる。腹力中等度前後。

・五苓散(ごれいさん)17

尿量減少、浮腫、蛋白尿、口渇、めまい、頭痛、嘔吐、下痢、腹痛、発熱、急性胃腸炎、糖尿病、尿毒症、夏負け、ネフローゼ、二日酔い、腹力中等度前後。胃内停水による振水音。

・猪苓湯(ちょれいとう)40

口渇、浮腫、頻尿、残尿感、排尿痛、排尿障害、血尿、不安感、水様下痢、血便、尿道炎、膀胱炎、前立腺肥大症、腎炎、尿路結石、急性胃腸炎。腹力中等度前後。

・五淋散(ごりんさん)56

強い消炎作用あり。頻尿、残尿感、排尿痛、膀胱炎、尿道炎、尿路結石、前立腺肥大症。

・五積散(ごしゃくさん)63

風邪の初期(症状の軽い感冒、頭痛、関節痛)、急性胃腸炎、更年期障害、上半身熱感、下半身冷え、冷え症、のぼせ、関節痛、腰痛、頭痛、下腹痛、神経痛、関節痛、月経痛。腹力中等度以下。

・胃苓湯(いれいとう)115

平胃散と五苓散を合せて煎剤にした処方。 食べ過ぎ、食あたり、夏負け、下痢、腹痛、口渇、浮腫、ネフローゼ、食欲不振。

・啓脾湯(けいひとう)128

消化不良、慢性腸炎、胃腸虚弱症、明け方近くの下痢、下痢しやすい、気力低下。腹力中等度以下。

・真武湯(しんぶとう)30

少陰病の代表的な処方。全身倦怠感、易疲労感、めまい、動悸、顔色不良、悪寒、高血圧、手足の冷え、むくみ、慢性胃炎、過敏性腸症候群、ネフローゼ症候群、関節リウマチ、脳卒中後遺症(手足の冷え、めまい、顔色不良、自発性にかける)、神経衰弱、老人性皮膚掻痒症(痩せ型、冷え症、皮疹が目立たず赤みに乏しいもの)。腹力中等度以下。

・治頭瘡一方(ぢづそういっぽう)59

乳児湿疹、慢性湿疹、便秘

・小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)21

嘔吐、食物が胃に収まらない、妊娠悪阻

・二朮湯(にじゅつとう)88

五十肩、頸肩腕症候群、肩や腕の痺れ・痛み、腹力中等度前後。胃内停水。筋肉にしまりなくブクブクの水毒性体質。

・抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)83

抑肝散に二陳湯を加え、抑肝散の状態が進行し、衰弱が加わった状態。神経が高ぶる、怒りやすい、せっかち、歯ぎしり、めまい、肩こり、頭痛、不眠症、神経症、夜泣き(抑肝散に悪心・嘔吐など衰弱兆候の加わったもの)、小児疳症(抑肝散に衰弱兆候の加わったもの)。腹力中等度以下。臍上悸。胃内停水。腹部陥没。痩せ型。左腹直筋の上半分の緊張。

・苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)39

息切れ、めまい、立ちくらみ、動悸、神経質、神経症、疲れ目、涙目。反復する頭痛。胃部振水音。脈沈緊。汗無し。臍上悸。腹力中等度以下。

・防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)20

腎炎、浮腫、尿量減少、多汗症、易疲労感、肥満、筋炎、関節炎、変形性膝関節症、ネフローゼ、月経不順(肥満、多汗症、関節水腫)、慢性皮膚病(肥満、皮膚掻痒症、毛包炎)、陰嚢水腫。腹力中等度以下。

●駆瘀血剤(くおけつざい)

血の流れの停滞によって生じる病態を瘀血(おけつ)という。血液や血流の障害および婦人科系の代謝不全によって起こる。症状としては、皮膚に艶がなくどす黒い、冷えのぼせ、紫斑や内出血によるあざができやすい、静脈瘤、頭痛、肩こり、痔、月経不順、腰痛、筋肉痛、下腹部圧痛、不眠症、イライラ、精神不穏、冷え、のぼせなど。瘀血を改善する方剤を駆瘀血剤(くおけつざい)という。

・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)25

虚実中間証から実証まで幅広く適応となる最も頻用される駆瘀血剤。頭痛、肩こり、めまい、のぼせ、冷え、腹痛、子宮内膜症、骨盤腹膜炎、月経不順、月経痛、更年期障害、痔、打撲症。腹力中等度前後。

・桂枝茯苓丸加よく苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん)125

腹痛、肩こり、めまい、のぼせ、月経不順、にきび、肝斑、手足の荒れ。腹力中等度以上。

・桃核承気湯(とうかくじょうきとう)61

実証の病態に適応となる駆瘀血剤。桂枝茯苓丸よりも瘀血症状と気の上衝が激しく、便秘しているものに用いる。便秘、のぼせ、逆上感、不眠、不安、いらいら、興奮、腰痛、月経時の神経不安、月経不順、月経痛。左下腹部圧痛。腹力中等度以上。

・当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)23

動悸、浮腫、易疲労感、全身倦怠感、頭痛、めまい、立ちくらみ、手足の冷え、顔色不良、貧血、慢性腎炎、月経不順、月経痛、更年期障害、不妊症、習慣性流産、妊娠中の腹痛・浮腫・痔、脳卒中後遺症(手足の冷え、頭痛、めまい)。臍上悸。臍傍圧痛。痩せ型。腹力中等度以下。

・加味逍遥散(かみしょうようさん)24

虚弱体質、精神不安定、肩こり、のぼせ、手足の冷え、不眠症、月経不順、月経痛、更年期障害。腹力中等度以下。

・通導散(つうどうさん)105

めまい、頭痛、肩こり、高血圧、便秘、腰痛、いらいら、打撲症、月経不順、月経痛、更年期障害、腹力中等度以上。

●補血剤

補血剤は血虚を改善する補血薬を主構成生薬とする処方群である。血は漢方医学では血管内の赤色の体液とその機能を意味し、全身に栄養を供給しかつ滋潤する働きがある。この血の働きが衰退した病態が血虚で、血の生成低下や過剰消耗によって起き、顔色が青白い、めまい感、眼精疲労、皮膚の乾燥や荒れ、爪の異常、冷え症、月経不順、脱毛、集中力低下などが主な症状である。気と血は互いに依存的な関係にあり、気のエネルギーにより血は循環され、気のエネルギーは血の栄養によりもたらされる。したがって、血虚は気虚に起因するあるいは気虚を引き起こすことが多く、このような病態では冷えをともなう、一方、気虚をともなわない血虚の場合、気の量が相対的に過剰になることから体や四肢がほてるなどの虚熱の症候を生じる。

・七物降下湯(しちもつこうかとう)46

四物湯に血管拡張作用を加えたもの。高血圧。痩せ型。貧血。

・きゅう帰膠がい湯(きゅうききょうがいとう)77

痔出血。腹力中等度以下。

・疎経活血湯(そけいかっけつとう)53

神経痛、腰痛、関節痛、筋肉痛、しびれ、貧血、皮膚乾燥、腹力中等度前後。

・当帰飲子(とうきいんし)86

慢性湿疹、皮膚乾燥、貧血、赤みに乏しい皮膚掻痒症、冷え。腹力中等度以下。

・温清飲(うんせいいん)57

のぼせ、冷え、頭痛、腹痛、貧血、顔色不良、皮膚乾燥、憂鬱、神経症、月経不順、月経痛、更年期障害。腹力中等度前後。

・温経湯(うんけいとう)106

手足のほてり、のぼせ、冷え、頭痛、口渇、慢性湿疹、しもやけ、神経症、不眠症、月経不順、更年期障害、腹力中等度前後。

・四物湯(しもつとう)71

顔色不良、易疲労、貧血、肌荒れ、手足の冷え、皮膚乾燥、しもやけ、肝斑、月経不順、産後の回復不全。腹力中等度以下。

・大防風湯(だいぼうふうとう)97

痛風、冷え、胃腸虚弱、関節炎、関節拘縮、関節リウマチ。腹力中等度以下。

・女神散(にょしんさん)67

のぼせ、めまい、産前産後の神経症、月経不順。腹力中等度以上。

●ごん連剤

少陽病に用いられる代表的な処方群には柴胡剤とごん連剤があり、柴胡剤が肝の熱によるストレス症状や胸脇苦満などの病態を目標にするのに対し、ごん連剤は心の熱による気逆の病態に適応する。黄ごんと黄連を主構成生薬とするごん連剤は、ほてり、のぼせのある赤ら顔、上半身の炎症、心下痞(みぞおちのつかえ)、心下痞硬(みぞおちのつかえと圧痛)、心悸亢進ぎみで興奮やイライラする傾向のあるものを目標とする。ごん連剤の適応する熱症状の判断基準として冷たい飲食物を好む傾向がある。熱をさます作用が強いことから、寒がりや冷え症には用いない。熱証は実熱と虚熱に大別でき、一般的な熱証の症状として熱感、のぼせ、顔面紅潮、目の充血、発熱、炎症、イライラ、怒りっぽい、不眠、便秘、尿量減少などがある。実熱は現代医学の炎症に相当し清熱により治すが、実熱に陰虚または血虚をともなう病態は、清熱と滋陰または補血を組合せて治療する。ごん連剤に配剤される清熱薬には、黄連、黄ごん、黄柏、山梔子、連ぎょう、牛ぼう子などがある。

・三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)113

大黄を加えている。消炎瀉下薬と考えられ、上半身の充血を鎮める意味を持ち、高血圧の諸症状で便秘のある人に用いる。実証に用いる。腹力中等度前後かそれ以上。高血圧、赤ら顔、ほてり顔、耳鳴り、不眠、便秘、痔出血、鼻出血、喀血、吐血、更年期障害、気分の不安定さ、いらいらしやすい。

・黄連解毒湯(おうれんげどくとう)15

高血圧の諸症状で便秘のない場合に用いる。腹力中等度前後、手足はあまり冷えない。高血圧、赤ら顔、ほてり顔、めまい、心悸亢進、急性胃炎、胃痛、胃もたれ、喀血、吐血、下血、皮膚掻痒症、皮膚熱感・発赤、脳卒中後遺症、感情失禁、易興奮性、焦燥感、気分の不安定さ、高ぶりやすい、いらいらしやすい。

・三物黄ごん湯(さんもつおうごんとう)121

手足のほてり

・柴胡清肝湯(さいこせいはいとう)80

慢性湿疹、慢性扁桃炎、神経症。痩せ型。皮膚浅黒い。腹力中等度前後。

・黄連湯(おうれんとう)120

口内炎、急性胃炎、二日酔い、腹痛、嘔吐、舌痛症。腹力中等度前後。

・清上防風湯(せいじょうぼうほうとう)58

にきび

・荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)50

にきび、慢性鼻炎、蓄膿症、慢性扁桃炎。皮膚浅黒い。腹力中等度前後。

●附子剤(ぶしざい)

附子(ぶし)を主薬とする処方群。附子はキンポウゲ科、トリカブトの塊茎で生薬の中で最も毒性の強い薬物ではあるが、経験的に新陳代謝亢進作用、鎮痛作用、強心作用などの薬効がわかっている重要な生薬であり、陰病で寒の症状が甚だしい状態に用いる温熱薬として位置づけられている。従って附子剤を用いる目標は体力の低下、四肢の冷え、などエネルギーの不足の状態である。もし陽病で熱の症状が甚だしい状態に用いると、附子の中毒症状(動悸、悪心、嘔吐)が現れる可能性が高くなる。

・真武湯(しんぶとう)30

少陰病の代表的な処方。全身倦怠感、易疲労感、めまい、動悸、顔色不良、悪寒、高血圧、手足の冷え、むくみ、慢性胃炎、過敏性腸症候群、ネフローゼ症候群、関節リウマチ、脳卒中後遺症(手足の冷え、めまい、顔色不良、自発性にかける)、神経衰弱、老人性皮膚掻痒症(痩せ型、冷え症、皮疹が目立たず赤みに乏しいもの)。腹力中等度以下。

・麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)127

悪寒や寒気が強いなど冷えの強く咽頭痛を伴う感冒、気管支炎、咽頭痛、アレルギー性鼻炎。高齢者、年長児。

・桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)18

冷え症、関節痛、神経痛。

・八味地黄丸(はちみじおうがん)7

腰部や下肢の倦怠・しびれ、手足の冷え、口渇、疲労倦怠感、めまい、高血圧、尿量減少、頻尿、排尿痛、腰痛、坐骨神経痛、脱力感、膀胱炎、腎炎、前立腺肥大症、インポテンツ、糖尿病、白内障。小腹不仁。腹力中等度以下。

●竜骨牡蠣剤

安神とは精神不安、不眠、動悸、焦燥感などを治療する方法で、安神薬として鉱物や貝殻などの生薬を用いる重鎮安神薬と、植物由来の生薬を用いる養心安神薬がある。竜骨牡蠣剤は重鎮安神薬である竜骨と牡蠣を主構成生薬とする処方群で、動悸、不眠、イライラなどの精神神経症状を緩解する目的で処方される。牡蠣と竜骨は重鎮安神薬としての効能は類似するが、竜骨の方が作用は強く、臍下部の動悸に有効である。一方、牡蠣は脇腹の動悸に効果があり、両者はしばしば併用される。

・桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)26

小児夜尿症、神経質、神経症、寒がり、冷え症、易疲労感、動悸、インポテンツ。臍上悸。

・柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)12

高血圧、動脈硬化症、腎臓病、蛋白尿、驚きやすい、気分が沈みがち、不眠症、夢を見やすい、動悸、不安、うつ状態、夜泣き、てんかん、インポテンツ、冷え症、神経質、ヒステリー。腹力中等度以下。臍上悸。

●理気剤

生体内をめぐるエネルギーである気の流れがストレスなどによって部分的に阻害された気鬱(気滞)は、抑うつ傾向、頭重、頭冒感、咽喉のつかえ感、曖気(げっぷ)、心下部のつかえ感、腹部膨満感、腹痛、四肢のしびれや痛み、朝起きにくいなどのさまざまな症候を示す。愁訴の多くは執拗で、時間的に消長したり、愁訴部位が変動するなどの不定愁訴として認められることが多い。このような気鬱を治療する処方群が理気剤で、理気薬を主構成生薬とする。

・平胃散(へいいさん)79

消化不良、胃もたれ、腹満、急性胃炎、慢性胃炎、食欲低下。腹力中等度前後。

・香蘇散(こうそさん)70

高齢者や胃腸虚弱症の初期の感冒。胃腸虚弱児の感冒。

・参蘇飲(じんそいん)66

高齢者や胃腸虚弱症のこじれた感冒、長引いた咳。胃腸虚弱児のこじれた感冒。腹力中等度以下。

●地黄丸類

地黄丸類は六味丸の六種の生薬を基本とする処方群で、一般に高齢者によくみられる腎陰虚に適応する。腎虚とは骨格、知能、運動能力などの先天的な成長発育不足や知能、性機能、運動機能、内分泌機能、代謝機能など加齢にともなう機能低下である。小児では骨格、知能、運動能力などの遅れ、成人では足腰、聴力、視力、知能、性機能などの低下、排尿障害、歯や毛髪の脱落、白髪、月経の遅れ、無月経などである。腎陰はすべての陰液の源で、下痢、発汗、出血、慢性病、ストレス、老化、性の不摂生などによって腎陰が不足すると腎虚の症状に加え、陰液不足による陽気の相対性亢進である虚熱、乾燥、機能の仮亢進による病態を生じる。熱感、手掌や足裏のほてり、のぼせ、イライラ、不眠、寝汗、性機能の仮亢進などである。腎陽はすべての陽気の源で、老化、性の不摂生、慢性病あるいは先天的に腎陽が不足すると、腎虚の症状に加え、陽気不足による陰液の相対的過剰による寒証、水滞、機能の低下による病態を生じる。気力や体力の低下、寒気、四肢冷感、頻尿、多尿、排尿障害、夜間尿、浮腫などである。

・八味地黄丸(はちみじおうがん)7

腰部や下肢の倦怠・しびれ、手足の冷え、口渇、疲労倦怠感、めまい、高血圧、尿量減少、頻尿、排尿痛、腰痛、坐骨神経痛、脱力感、膀胱炎、腎炎、前立腺肥大症、インポテンツ、糖尿病、白内障。小腹不仁。腹力中等度以下。

・六味丸(ろくみがん)87

手足のほてり、口渇、易疲労感、浮腫、排尿困難、頻尿、皮膚乾燥・掻痒症・蕁麻疹

・牛車腎気丸

●麻黄剤(まおうざい)

麻黄(まおう)を主薬とする処方群。麻黄の薬効は発汗、解熱、止咳、利尿、鎮痛などであるが、組み合わせる生薬により引き出される薬能は変わってくる。桂皮(けいひ)との配合では発汗、杏仁(きょうにん)や石膏(せっこう)では鎮咳、朮(じゅつ)や薏苡仁(よくいにん)では利湿止痛が強調される。

・麻黄湯(まおうとう)

傷寒に用いる処方であり、発汗を促し、節々の痛みの緩和、解熱、鎮咳に用いる。

・麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)

咳や喘息の発作が甚だしい人に用いる。

・麻杏薏甘湯(まきょうよっかんとう)

リウマチや神経痛に用いる。

・葛根湯(かっこんとう)

体力の充実した人の風邪の初期で、汗をかかず、首・肩の緊張による諸症状に用いる。

・小青竜湯(しょうせいりゅうとう)

風邪の初期でくしゃみ、鼻水などとともに花粉症や鼻アレルギーなどに用いる。

・麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)

悪寒や寒気が強いなど冷えの強い感冒や、気管支炎に用いる。

●桂枝湯類(けいしとうるい)

桂皮が主薬である桂枝湯(けいしとう)(桂皮、芍薬、生姜、大棗、甘草)を基本骨格にすえる処方群である。病態に応じて桂枝湯に他の生薬を加減することでその治療に幅を持たせている。基本骨格である桂枝湯は、「傷寒論」の最初に出てくる太陽病虚証に用いる重要な処方である。その適応は、悪寒、悪風、頭痛、発熱があり汗が出ている状態に用いると記載されており、病初期からの薬剤であることを示している。体力的に虚弱で消化機能が弱く、頻繁に風邪を引く傾向の人に適している。

・桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)

芍薬(しゃくやく)を増量している。虚弱な人の腹痛、下痢、便秘などに用いる。

・小建中湯(しょうけんちゅうとう)

膠飴(こうい)(餅米を蒸し麦芽で糖化したもの)を加えている。腹部の緊張を緩め、胃腸の機能を調える働きが出るために虚弱体質の改善や疲労回復に用いられる。

・桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)

竜骨(りゅうこつ)と牡蛎(ぼれい)を加味している。やせて顔色が悪く、神経過敏で疲労感を訴える精神不安に用いる。

・桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)

朮(じゅつ)と附子(ぶし)を加味している。麻黄剤では強すぎて飲めない虚証の神経痛、関節痛、関節リウマチなどに適応する。

・葛根湯(かっこんとう)

桂枝湯の構成生薬に麻黄(まおう)と葛根(かっこん)が加味されている。主薬が桂皮から葛根と麻黄に変わることにより、体力が充実していて汗のでない実証の風邪に用い、麻黄剤の関連処方に含まれる。

●白虎湯類

・白虎湯

・白虎加人参湯

・白虎加桂枝湯

●大黄剤(承気湯類)

大黄剤は大黄を主構成生薬とする処方群で、大黄の清熱(消炎、解熱、鎮静)により胃腸の内熱(胃腸の炎症)を除くとともに、強い瀉下作用により腸内の老廃物を排泄し、消化管の働きを正常化させる働きがある。
大黄剤は基本的に胃熱証の適応であり、便が硬く、食欲や体力のある人の便秘に適応する。
したがって、虚証や腹力の低下した便秘に用いると、腹痛や下痢を引き起こすので注意を要する。
一般に大黄剤は頓服として用い、便通が改善したら連用を避ける方がよい。

・乙字湯

・通導散

・潤腸湯

・大黄甘草湯

・防風通聖散

・麻子仁丸

・治打撲一方

●石膏剤

病位が表であれば桂麻剤の発表によって解熱させるが、まだ病邪が胃腸に及んでいない裏熱の場合は寒性薬の清熱により対応する。
清熱薬は主に少陽病や陽明病の熱証に用いられ、前者には柴胡剤やごん連剤が、後者には石膏剤が適応する。
石膏剤は石膏を主構成生薬とする処方群で、石膏によって肺の熱をさまし、津液を生じ(生津)口渇を止め、熱証の人の興奮や炎症を鎮める効果をもつ。
すなわち、石膏剤は高熱、発汗、口渇、多飲などの悪寒がない発熱性疾患及び皮膚の炎症やほてりなど体表に近い病位に熱が留まった病態を緩解する。
石膏は寒性が強く処方全体が熱証や実熱向きであるため、石膏剤は寒気のあるものや顔色の蒼白い寒証あるいは虚熱の人には不適である。

・白虎加人参湯

・釣藤散

・消風散

・辛夷清肺湯

・木防已湯

●桂麻剤

桂麻剤(桂枝麻黄剤)は桂枝湯を基本に麻黄を配剤した処方群のことで、なかでも麻黄を配剤する処方群を麻黄剤と呼ぶ。
これらはカゼ症候群や急性熱性疾患の初期の症状(太陽病の病態)である悪寒、悪風、発熱、頭痛、鼻閉などの表証に用いられる。
太陽病には桂枝湯の適応である良性で軽度な急性熱性疾患である中風と麻黄剤の適応となる悪性で重度な急性熱性疾患の傷寒の2つの病勢がある。
いずれも寒邪、風邪により体表面が閉じられ熱がこもった病態で、桂麻剤により表を温めて発汗(発表・発散・解表)させることで、病邪や病毒を体外に追い出し効果を発現する。
桂枝湯の加減方(桂枝加芍薬湯、桂枝加芍薬大黄湯、小建中湯、黄耆建中湯、当帰建中湯など)は桂枝湯類とも呼ばれ、太陰期の胃腸虚弱に用いられる。

・桂枝加芍薬湯

・桂枝加芍薬大黄湯

・小建中湯

・黄耆建中湯

・当帰建中湯

●その他の漢方薬

・酸棗仁湯

高齢者に用いる例が多く、疲れているけれど眠れない

・半夏厚朴湯

予期不安が強い例で、抑うつ気分、動悸、のどの詰まった感じ

・桂枝加竜骨牡蛎湯

腹部所見で腹力がやや弱く、腹直筋の緊張が見られ、著明な腹部動悸亢進

・抑肝散

不眠、イライラ、易怒性や攻撃性などの認知症患者の周辺行動に対する効果あり。介護者の症状改善にも同時に効果あり。

・麦門冬湯

咽喉頭異常感症、乾燥感がある場合、嗄声

●気剤(きざい)

漢方方剤の分類で気の衰え、停滞、上衝などを改善する処方を気剤という。「気」は生命活動における根本的エネルギーにあたる。気に関する病態には気虚(エネルギー不足)、気滞(気の停滞)、気逆(発作的な症状)がある。

気虚改善に関する代表的な漢方処方は人参湯類や参耆剤の項でとりあげた人参湯や四君子湯及び補剤(補中益気湯、十全大補湯)が挙げられる。

気を巡らして気鬱を治療する代表的な処方としては半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)や香蘇散(こうそさん)があり、前者は梅核気(ばいかくき)を主症とする多くの神経質症に適応し、後者は半夏厚朴湯より虚証のタイプに用いられる。

気逆は発作性の冷え、のぼせ、動悸、頭痛、めまい、不安や焦燥感などの症状があり、代表的な処方として苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)や、桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)などがあり、気の流通をうながし、気を鎮めたり、気の無駄な流出を防いだりしている。

●気虚

六君子湯、補中益気湯、十全大補湯
精神的葛藤が強い→加味帰脾湯
易疲労感、手掌発汗→黄耆建中湯、小建中湯
気虚が進行して陽虚を呈する→人参湯

●起立性調節障害

気虚が中心、腹痛などの気欝、めまいなどの水滞が併存
柴胡桂枝湯、補中益気湯、小建中湯、半夏白朮天麻湯

腹痛、緊張が強く腹直筋が固く触れる→小建中湯
浮遊感→半夏白朮天麻湯

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