慢性蕁麻疹

●蕁麻疹の分類
蕁麻疹の原因には様々なものがあり、また蕁麻疹の症状の現れ方にもいくつかの特徴的なものがある。しかしこれらは必ずしも別々に起こるのではなく、一つの蕁麻疹にいくつかの原因が関係したり、同じ人に二つ以上のタイプの蕁麻疹が同時に現れることもある。したがって蕁麻疹の分類は必ずしも明確にはされていないが、そのなかでも原因や症状などの特徴や定義が比較的はっきりしている種類としては、以下のようなものがある。
・急性蕁麻疹:毎日のように繰り返し症状が現れる蕁麻疹のうち、発症して1ヶ月以内のもの。細菌、ウイルス感染などが原因となっていることが多い。
抗ヒスタミン薬が有効。
重症な場合、ステロイド+抗ヒスタミン薬(ポララミン、アタラックスP)DIVで改善することが多い。強力ミノファーゲンCは有効なことが多いが、アレルギーに注意する。
・慢性蕁麻疹:毎日のように繰り返し症状が現れる蕁麻疹のうち、発症して1ヶ月以上経過したもの。原因が特定できないことが多い。
・物理性蕁麻疹:機械的擦過や圧迫、寒冷、温熱、日光、振動などといった物理的刺激により起こる。
・コリン性蕁麻疹:入浴や運動などで汗をかくと現れる蕁麻疹。一つ一つの膨疹(皮膚の膨らみ)の大きさが1~4mm程度と小さい。小児から若い成人に多い。
・アレルギー性蕁麻疹:食べ物や薬剤、昆虫などに含まれる特定物質(アレルゲン)に反応して起こるもの。アレルゲンに結合するIgEという血清蛋白が関与する。
・イントレランス:アスピリンなどの非ステロイド系消炎鎮痛薬、色素、造影剤、食品中のサリチル酸などにより起こる蕁麻疹で、IgEが関与しない。
・血管性浮腫:唇やまぶたなどが突然腫れあがり、2~3日かかって消える。痒みを伴わない。稀に遺伝性のものである場合がある。通常の蕁麻疹は、皮膚のごく表層の血管が反応して症状が現れるが、血管性浮腫は皮膚の深いところの血管が反応する。そのため通常の蕁麻疹のような境界のはっきりした膨疹ではなく、赤みもあまりはっきりしない皮膚の腫れとして現れてくる。この変化は特に眼、まぶたを初めとする顔面に現れやすいが、手や腕、足などに起こることもある。また通常の蕁麻疹と異なり、痒みがなく、一度現れると消えるまでに2~3日かかることがある。血管性浮腫には、通常の蕁麻疹と同様の仕組みで起こるものと、C1インヒビターと呼ばれる血液中の蛋白質の働きが弱いために起こるものがある。さらにC1インヒビターの働きは、生まれつき低い場合と後天的に低下する場合がある。これらの異常の有無は血液検査によりある程度まで明らかにすることができる。
●慢性蕁麻疹
・病因
原因不明の事が多いが、鑑別として他にC型肝炎、B型肝炎、ピロリ菌感染、扁桃腺炎、副鼻腔炎、膠原病、齲歯、薬剤、感染症、ストレス、食品添加物、ダニ、ハウスダストなどできたすこともある。ピロリ感染のある患者では除菌後に慢性蕁麻疹の改善が得られることがある。また、歯科金属アレルギーのある患者では歯冠除去後改善が得られることがある。
最近の調査で蕁麻疹におけるアレルギーの関与は5.4%で、食物アレルギーによるものは成人の急性型では1%以下と報告されている。肉、鶏卵、乳製品、青魚、豆乳、納豆、ポテト、炭水化物の多食、カレー、チョコレート、コーヒー、カフェインなどに反応することがある。飲食物が合わなくなる期間は短くて1~2ヶ月、普通は数ヶ月、長い時は数年から4~5年。
・検査
蕁麻疹の原因の多くは特発性であり、IgE-RAST等で何かわかる可能性は低い。
IgG検査をすると食物96種類の遅発性アレルギーが分かる。
・治療
①抗ヒスタミン薬
抗ヒスタミンは、大きく分けると下記二群に分かれる。
・三環系(ザジテン、アゼプチン、アレジオン、クラリチン、アレロック)
・ピペリジン系(エバステル、アレグラ、タリオン)、ピペラジン系(セルテクト、ジルテック、ザイザル)
70-80%が有効。無効な場合増量または他剤へ変更する。
長期間の内服にて治癒率が上がり得る可能性がある。
抗ヒスタミン薬を服用しても効果が低い場合には、三環系からピペリジン系、ピペラジン系に変更(またはその逆)する。
三環系とピペリジン系、ピペラジン系を併用する。
使用していた抗ヒスタミン薬の増量が効果的と言われている。1.5倍量から開始する。1日1錠タイプは2倍量でも査定されないことがある。増量の場合、分2ではなく分1で内服する。
第一世代との併用も考えるが、運転ができなくなる。
ロイコトリエン拮抗薬の併用も効果がある。
ネオーラル併用することもある。
②H2ブロッカー、抗不安薬、抗ロイコトリエン薬、トランサミン
③漢方薬
柴胡清肝湯、柴胡桂枝乾姜湯
茵陳五苓散

レセルピンが難治性蕁麻疹に有効という報告があるが、うつなどの副作用が出ることもある。
⑤ピロリ菌除菌
除菌率80%で成功例では約30~40%の確立で完治あるいは著明改善が期待される。陰性症例でもH2ブロッカーが有効な症例(40~50%)もあり、試してみる価値はある。
⑥ヒスタグロビン
ヒスタグロビン1A+ノイロトロピン(3.6単位)1A筋注 週に2回 10週
⑦プレドニン 5-10mg/日
⑧免疫抑制剤(シクロスポリン、プレドニン20mg/日)
●血管性浮腫(クインケ浮腫)
1.概念
眼瞼や唇などが突然腫れ上がり、2,3日で消える。痒みを伴わず、境界がはっきりしない腫れのことが多い。皮膚、気道、消化管などに反復する。C1インヒビター(C1-INH)活性の先天的あるいは後天的な欠損で生じる。診断にはこの疾患を念頭に置き、CH50、C3、C4、C1-INHを測定。さらにC1qを測定することによって、遺伝性か後天性か分類を確定する。
遺伝性血管性浮腫では幼少時は無症状か軽度であるが、10代ころから最初の症状が出始める。皮膚深部の浮腫では、圧痕を伴わない境界の不明瞭な浮腫が、顔面(眼瞼、口唇、舌)、四肢、外陰部に出現し、通常2-5日間で自然消失する。熱感、痛み、かゆみは伴わない。誘因として外傷、感染症、医療行為、情緒的ストレス、生理などがある。
上気道に浮腫が生じると呼吸困難を生じる。喉頭より上部で浮腫が生じることが多く気管切開をすれば助かるが、未診断だと、窒息死に至ることがある。症状出現から窒息までの時間は20分から14時間と様々である。消化管に浮腫が生じると、悪心、嘔吐、腹痛、腹部圧痛など様々な閉塞症状をきたす。皮膚の局所浮腫症状がなく、消化管症状のみの場合、急性腹症として緊急手術されたり、心身症と誤診されたりする。通常12-24時間で消化器症状は軽快する。
2.分類
・遺伝性血管性浮腫(Hereditary Angioedema: HAE)
Type 頻度 C3 C4 CH50 C1q C1-INH活性 C1-INH抗原
1 80-85% 正常 低値 低値 正常 低下 低下
2 15-20% 正常 低値 低値 正常 低下 正常~高値
Type1 HAE: C1-INHの産生低下。通常10代で発症。常染色体優性遺伝。
Type2 HAE: C1-INHの産生正常だが機能に障害がある。通常10代で発症。常染色体優性遺伝。
・後天性血管性浮腫(Aquired Angioedema: AAE)
通常40歳以降に発症。HAEより稀。
Type C3 C4 CH50 C1q C1-INH活性 C1-INH抗原
1, 2 正常 低値 低値 低下 低下 正常~低下
Type1 AAE: 低悪性度のリンパ増殖性疾患(低悪性度悪性リンパ腫、慢性リンパ球性白血病、M蛋白血症)に伴う。
Type2 AAE C1-INHに対する自己抗体の出現。
・薬剤誘発性血管性浮腫
降圧剤(ACE阻害剤、アンギオテンシンII受容体拮抗薬、ペニシリン、アスピリン等のNSAIDs、経口避妊薬(ピル、エストロゲン)、線溶系酵素などにより誘発されることがある。ACE阻害剤による血管性浮腫では喉頭浮腫による窒息死の報告がある。基礎にC1-INHの異常があると症状が重篤になる。原因薬剤の中止とC1-INHの補充(ベリナートP)を検討する。
・Episodic (non-episodic) angioedema with eosinophilia(EAE, NEAE)
EAE: 好酸球増加に伴う四肢末梢の浮腫。1984年にGleichらにより報告された。反復する好酸球増加、血管性浮腫、蕁麻疹、IgM増加、発熱、臓器浸潤を伴う好酸球増多症と異なり、内臓障害ななく、良好な経過をたどる。
NEAE: 日本ではこのタイプが多い。若年女性(20-37歳)に多く、反復しない。少量のステロイドで軽快、自然寛解もある。
3.機序
IFNやIL-6などの炎症性サイトカインによって産生誘導されるC1-INHは、補体系の因子C1r、C1s、凝固系因子 (XIa, XIIa, XIIf)、キニン系(kallikrein)を抑制するが、C1-INHの欠損ではこうした系を抑制できず、炎症や血管浮腫が出現する。
4.検査
C1インヒビター活性(保険適応)で低値となる。発作時に、C4はHAEの98%で低値となるため、C4測定は有効な目安になる。C1インヒビター定量(保険適応外)を行うと、低値であれば1型HAE、正常値ならば2型HAEと診断される。
家族歴がない場合、C1q(保険適応外)が低値であれば後天性とされているが、遺伝性の場合でも低値を示す場合がある。確定診断のためには、遺伝子解析が必要となる。

3型HAEを疑う場合は、第XII因子の変異の可能性がある。
5.診断のアルゴリズム
遺伝性血管性浮腫を軽度疑う場合
血清C4測定を行う。
低値?C1インヒビター活性測定を行う。
正常?遺伝性血管性浮腫はほぼ否定できる。
遺伝性血管性浮腫を強く疑う場合
C1インヒビター活性測定を行う
低値?C1インヒビター欠乏による血管性浮腫と診断できる。
?以下のように病型の鑑別を行う
家族歴がある?遺伝性血管性浮腫と診断できる。
?C1インヒビター定量を行う
?低値の場合は1型、正常または上昇の場合は2型と診断できる。
家族歴がない?血清C1q測定を行い低値ならば後天性血管性浮腫の
可能性があるとされるが例外も多い。
?確定診断のためには遺伝子解析が望ましい。

正常?3型や薬剤性血管性浮腫を疑う?薬剤服用歴(とくに降圧剤、
エストロゲン製剤)の確認。なお3型は日本人での報告はないが、
欧米の報告では家族性があり、ほとんど女性に発症する。
6.発作時の治療
・皮下浮腫(顔、頚部以外)
経過観察
トラネキサム酸(トランサミン)(15mg/kg 4時間毎)
C1インヒビター補充療法(50kg以下 500単位、50kg以上 1000~1500単位 静注)
・皮下浮腫(顔、頚部)
トラネキサム酸(トランサミン)(15mg/kg 4時間毎)
C1インヒビター補充療法(50kg以下 500単位、50kg以上 1000~1500単位 静注)
・腹部症状
トラネキサム酸(トランサミン)(15mg/kg 4時間毎)
C1インヒビター補充療法(50kg以下 500単位、50kg以上 1000~1500単位 静注)
・喉頭浮腫
C1インヒビター補充療法(50kg以下 500単位、50kg以上 1000~1500単位 静注)
ICUにおける気管内挿管、気管切開
7.長期予防
ステロイド、抗ヒスタミン薬、エピネフリンは症状軽減に有効だが、発作を抑えるには不十分で、男性ホルモン(danasol, stanozol, methyltestosterone)の長期投与により浮腫などの発作予防を行うことある。重症の血管性浮腫発作にはC1-INHの補充(ベリナートP)を検討する。
1ヶ月に1回以上、1ヶ月に5日以上の発作期間、喉頭浮腫の既往歴の場合検討する。
・トラネキサム酸(トランサミン)
30-50mg/kg/日を1日2-3回に分けて服用
副作用 筋肉痛、筋力低下、疲労感、血圧低下
・ダナゾール(ボンゾール)
2.5mg/kg/日(最大200mg/日)を1ヶ月、
もし無効ならば、300mg/日を1ヶ月、
更に無効ならば400mg/日を1ヶ月 、
200mg/日で有効ならば、その後100mg/日を1ヶ月、
50mg/日または100mg/隔日へ減量する。
禁忌:小児、妊婦、授乳中、癌患者
副作用:男性化、肝障害、高血圧、脂質異常、多血症、出血性膀胱炎
経過観察:6ヶ月毎の血液検査が必要、また200mg/日以上の場合6ヶ月毎の腹部エコー、200mg/日以下の場合1年毎の腹部エコーが必要(肝腫瘍出現の可能性があるため)

8.短期予防
・歯科治療(侵襲性が弱い場合)など小ストレス時
C1インヒビター補充療法の準備の上ならば予防は必要なし
・歯科治療(侵襲性が強い場合)外科手術など大ストレス時
術前1時間前のC1インヒビター補充療法(50kg以下 500単位、50kg以上 1000~1500単位 静注)
更に2度目のC1インヒビター補充療法の準備をしておく。
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