ループス腎炎の診断・治療

●ループス腎炎の分類
Ⅰ型:微小メサンギウムループス腎炎
光顕では正常だが、蛍光抗体法・電顕でメサンギウムに免疫複合体沈着、尿蛋白陰性
Ⅱ型:メサンギウム増殖性ループス腎炎
光顕でメサンギウム細胞または基質の拡大、メサンギウムに免疫複合体沈着、尿蛋白陰性~軽度陽性、尿潜血陰性~軽度陽性
蛍光抗体法・電顕で内皮下・上皮下沈着を認めることもある
Ⅲ型:巣状ループス腎炎
全糸球体の50%未満に管内・管外病変が存在、持続性蛋白尿、軽度血尿、低補体血症、抗DNA抗体上昇
A:活動性病変 A/C:活動性および慢性化病変 C:慢性化病変
Ⅳ型:びまん性ループス腎炎
全糸球体の50%以上に管内・管外病変が存在、中程度の蛋白尿、沈査にて赤血球円柱・細胞円柱、低補体血症、抗DNA抗体高値
A:活動性病変 A/C:活動性および慢性化病変 C:慢性化病変
Ⅴ型:膜性ループス腎炎
全節性または分節性の連続した上皮下免疫沈着物、高度蛋白尿、血尿、低補体血症、抗DNA抗体高値
Ⅵ型:進行性硬化性ループス腎炎
90%以上の糸球体が硬化、高度蛋白尿、腎機能低下
●ループス腎炎ACR診療ガイドライン(2012)
米国リウマチ学会によるループス腎炎の2012年診療ガイドラインを紹介する。米国ではSLEの基本治療薬としてhydroxychloroquine(HCQ)が、免疫抑制剤としてMMFとcyclophosphamide (CYC)がエビデンスに基づいて主に使用されているが、日本ではHCQやMMFはSLEに対して保険適応がないのが現状である。
ACR guidelines for screening, treatment, and management of lupus nephritis. Hahn BH, et al. Arthritis Care Research 2012; 64:797-808
(文中level A;複数のRCTあるいはメタ解析、level B;一つのRCTあるいは非RCT、level C;総意、専門家の意見、case報告。)
●ループス腎炎の確定
ACR criteriaを満たすときループス腎炎と診断する。持続的尿蛋白>0.5g/dayまたは3+以上、and/or 細胞円柱(RBC、hemoglobin、granular、tubular、mixed)で定義する。持続的尿蛋白量は随時尿で蛋白/クレアチニン比>0.5でも可能。細胞円柱は活動性尿所見(非感染症下で>5 RBC/hpf 又は >5 WBC/hpf、又は赤血球円柱か白血球円柱を認める)でも可能。ループス腎炎に矛盾しない免疫複合体による糸球体腎炎を腎生検で認める場合は確実である。
●腎生検と組織診断
活動性の証拠のある未治療のすべてのループス腎炎患者は、糸球体病変がISN/RPS2003年分類で分類できるよう、強い禁忌がない限り腎生検の実施を推奨する(level C)。このとき、Activity、chronicity、尿細管病変や血管病変もあわせて評価できる。特に以下のような場合は腎生検が望まれる。
敗血症、脱水、薬剤性などの原因がないのに血清クレアチニンが上昇
一日尿蛋白が1g以上
他に原因がないのに短期間に2回以上、尿蛋白0.5g/日以上かつ5 RBC/hpf以上か、細胞性円柱を確認する場合
治療はISN/RPS分類の病理分類に基づいて推奨する。ClassIとClassIIでは一般的に免疫抑制療法は必要なく、ClassIIIとClassIVではステロイドと免疫抑制剤を併用した積極的治療が必要。ClassVがIII/IVと共に認められた場合はClassIII/IVと同様の治療を行う。ClassV単独ならば免疫抑制剤とステロイド中等量を用いる。ClassVIの場合は腎移植を考慮する。
●付属治療
禁忌がない限り、腎炎を伴う全てのSLE患者にはhydroxychloroquine(HCQ)を推奨する(日本では保険適応なし) (level C)。HCQ継続投与を受けた場合はループスの再燃頻度が少なかったという報告、HCQ投与を受けているSLE患者では腎障害が少ないという報告に基づく。HCQはSLE患者の血栓症のリスクを減らすという報告もある。
一日尿蛋白0.5g以上(または随時尿で蛋白/クレアチニン比>0.5)のすべてのループス腎炎患者にはACE阻害剤かARBの投与を行うべきである(level A)。これらの薬剤は非糖尿病性腎症において尿蛋白を約30%減少させ、血清クレアチニン値が2倍になる時期や末期腎障害への進展を遅らせる。妊娠には禁忌。ACE阻害剤とARBの併用には賛否両論ある。ACE阻害剤とARBはカルシウム拮抗剤や利尿剤よりもCKD患者の腎機能保持が優れている。
血圧130/80mmHg以下を目標に治療することを推奨する(level A)。こうした降圧目標が腎機能障害進展を遅らせることが示されている。
LDL>100mg/dlの患者に対してはスタチン製剤を推奨する(level C)。GFR<60ml/minは動脈硬化のリスク因子であり、また、SLE自体が動脈硬化の独立した危険因子である。
妊娠可能性のある女性で活動性腎炎、腎炎既往がある場合、疾患や治療による妊娠へのリスクについての相談が勧められる(level C)。
●ISN ClassIII/IV ループス腎炎に推奨する寛解導入療法
ステロイド投与とともに、経口MMF(2-3g/day)またはCYC点滴投与を推奨する(level A)。MMFとCYCの治療効果は同等と認められている。MMFによる長期研究はCYCほど豊富ではないが、MMF 3g/日×6ヶ月間、MMFを減量後さらに3年間維持療法で投与する方法で良好な結果が得られている。MMFとステロイドの併用療法は、アジア人を含めてすべての人種で同様の効果を認めている。また、アジア人は比較的少量のMMFでも効果があるという意見があり(level C)、通常MMFを3g/日投与するところアジア人では2g/日投与することがある。最近、台湾からこうしたMMF少量での有効性が報告されている。
MMFの推奨投与量は臨床状況による。細胞性半月体を認めないClassIII/IV、腎生検が出来ない場合でも尿蛋白はあるが血清クレアチニンが安定していればMMF 2-3g/日でもよいと思われる。細胞性半月体を認めるClassIII/IV、尿蛋白があり最近の血清クレアチニン値が上昇している場合はMMF 3g/日が望ましい。MMF類縁薬では、MMF 2000‐3000mg/日とMMFの活性代謝物mycophenolic acid (MPA) 1440‐2160mg/日で寛解導入効果が等しいと考えられる。
推奨するCYC点滴法は2つある。low-dose CYC 点滴(2週に一度500mg点滴を計6回)後、経口azathioprine(AZA)または経口MMFで維持療法(level B)。あるいは、high-dose CYC 点滴(月に一度500-1000 mg/m2点滴を計6回)後、AZAまたはMMFで維持療法(level A)。限られた前向き比較研究であるが、毎日の内服CYCとhigh-dose CYC点滴療法では効果と毒性はほぼ同程とされている。ヨーロッパのデータではlow-dose CYCもhigh-dose CYCも効果は同等であり、10年の経過観察での、ループス腎炎の再燃率、末期腎障害率、血清クレアチニン値が2倍になる率も差を認めなかった。しかし、重篤な感染症はlow-dose CYCで少なかったため、ヨーロッパ白人に対してはlow-dose CYCを推奨する。
ステロイドパルス(methylprednisolone 500-1000mg/day 3回)と免疫抑制療法の併用は推奨する(level C)。その後は、内服ステロイド(0.5-1mg/kg/day)を投与し、必要最少量まで漸減する。ステロイドパルス療法を寛解導入に使用することは主に専門家の意見であり、最近の前向きの試験では実施も未実施もある。ステロイドの減量方法に関しては病態が様々なため十分なデータはない。毎月のCYC点滴にステロイドパルスを併用するかどうか合意はない。
寛解導入のためAZAを第一選択薬として使用することは推奨しない。AZAはCYCよりも寛解導入効果が弱いという報告があり、AZAを寛解導入維持療法で使用するのは、CYCによる寛解導入よりも腎炎再燃が多く、CYCのほうが慢性病変の進展をよく抑えていた。
3ヶ月の時点で明らかな悪化の証拠(尿蛋白量や血清クレアチニン値の50%以上の上昇)がない限り、ステロイド用量の変更は除いて、CYCやMMFによる寛解導入療法を6ヶ月間は変えないことを推奨する(level A)。CYCかMMFの治療8週間後に、尿蛋白量が25%以上改善しC3やC4が正常化した例ではその後の腎炎は良好な経過をたどりやすく、治療6ヶ月後に、血清クレアチニン値が低下し一日尿蛋白1g未満であれば良好な長期予後が予測された。MMFかCYCの治療後6ヶ月で重症ループス腎炎の約50%が改善し、12-24ヶ月では65-80%が改善している。
妊娠希望患者ではCYCよりもMMFが望ましい。High-dose CYC点滴は男性女性において不可逆的な不妊症をおこしうる。high-dose CYC点滴で治療された女性が無月経となる率は年齢と関係し、25歳未満で12%、30歳未満で27%、31歳以上では62%。25歳以上で6ヵ月のhigh-dose CYC点滴(積算4.4‐10g)では17%が無月経となり、さらに4ヶ月に一回の投与を続けると無月経は64%に達した。CYC使用患者の生殖能保持のためのleuprolide使用に関しての合意は得られなかった。MMFには催奇形性があり、MMF/MPA使用前には妊娠していないことを確認し、妊娠の6週前には投薬を中止するべきだ。
●細胞性半月体を伴ったClassIV or IV/Vのループス腎炎に推奨する寛解導入療法
ステロイドパルス療法の併用とともに、CYCかMMFによる寛解導入療法(level C)、さらに高用量の経口ステロイド(1mg/kg/日)の併用を推奨する。腎生検でどんな半月体でも存在すれば半月体形成性腎炎と考える。最近まで専門家は細胞性半月体を伴えばhigh-dose CYC点滴を好んでいた。半月体を認めると予後不良である。中国の報告では、MMF(2g/日)はhigh-dose CYC点滴と同様に半月体形成性ClassIVループス腎炎に有効であった。
●Class V “pure membranous” ループス腎炎に推奨する寛解導入療法
Class V病変のみで、ネフローゼ患者にはプレドニン(0.5mg/kg/日)とMMF (2-3g/日)の投与を推奨する(level A)。MMF2-3g/日とプレドニン(平均27mg/日)6ヶ月間投与は、CYC点滴とステロイド併用と同等の効果だった。6ヶ月の時点でのネフローゼは0-30%であった。他の治療法の報告はあるが推奨にはならなかった。例えば、3群での治療比較の前向き研究で、プレドニン単独(40mg/m2隔日で8週間投与)投与し12ヶ月後までには10mg/m2まで減量する方法、プレドニン隔日とCYC点滴(500-1000mg/m2、2ヶ月毎に6回投与)、プレドニン隔日とcyclosporine(5mg/kg、11ヵ月投与)では、寛解率はプレドニン単独27%、CYC 60%、cyclosporine 83%。一年以降ではCYCがcyclosporineよりも再燃が少なかった。
●寛解導入後の維持療法の推奨
維持療法にはAZAかMMFを推奨する(level A)。ふたつの前向きの試験で寛解導入後の維持療法について検討されている。欧米など複数国で行われた大規模試験で、high-dose CYCかMMFの6ヵ月の投与で寛解導後、AZA 2mg/kg/日または、MMF 2g/日で維持療法を行った。プレドニン投与は10mg以下。3年間の観察期間で、MMFはAZAよりも有意に治療失敗(死亡、末期腎障害、血清クレアチニンの倍増、再燃)が少なく、重篤な副作用はAZAで多かった。ヨーロッパの小規模の研究では、low-dose CYCで寛解導入療法後、維持療法はAZA 2mg/kg/日かMMF 2g/日で行ったところ、4年間の観察期間で、死亡、末期腎障害、血清クレアチニン倍増、再燃といった項目で差を認めなかった。AZA、MMFの減量や中止に関しては特に提案はない。
●寛解導入に十分反応しなかった場合の治療変更の推奨
ステロイド+(MMF or CYC)による6ヶ月の治療が奏功しなかった場合、ステロイドパルス療法(3日間)併用とともに、CYCをMMFへ、またはMMFをCYCへ変更を推奨する(level C)。ループス腎炎が6ヶ月の寛解導入療法後も改善しない、あるいは増悪の場合、CYCとMMFの両者とも奏功しない場合などはrituximab使用の投与もある(level C)。Calcineurin阻害剤の使用に関しては合意に至らなかったが、寛解導入療法や難治性病態での有効性の証拠がある。rituximabに関しての前向き試験ではMMF+ステロイドに、rituximab追加とプラセボ追加の間で1年後に差はなかった。cyclosporineやtacrolimusに関しては前向き研究がある。ある研究では、6ヶ月の治療でtacrolimusはhigh-dose CYC点滴と寛解率で等しかった。他の4年間の前向き研究では、腎炎再燃予防の維持療法としてcyclosporineはAZAと同等だった。
3ヶ月のステロイド+(CYC or MMF)による寛解導入療法でも腎炎が増悪する場合は他の治療法への変更を推奨する(level C)。MMF+Calcineurin阻害剤、MMT+rituximabが試験中で、寛解導入療法が奏功しなかった患者に対しては考慮されるが、まだ強い証拠はない。Belimumab(anti-BLyS/BAFF)はSLE治療薬としてFDAに承認されているがループス腎炎に関しては試験されていない。活動性のあるSLE(SLEDAI6点以上、高度活動性腎炎は除く)でステロイド+免疫抑制剤に、belimumab(10mg/kg/月)追加が検討された。52週の時点でbelimumab投与群はプラセボと比べ高い改善率を認めた。ループス腎炎の評価はされていないが、14-18%で一日尿蛋白2g以上であった。事後解析では53週で尿蛋白と腎炎再燃の減少傾向がbelimumab群であった。治療にもかかわらず血清学的に陽性の活動性SLEに対してbelimumab使用をFDAは承認している。
●SLE患者での血管病変と腎臓異常
SLEの腎組織には血管炎、小動脈狭窄を伴うフィブリノイド壊死(Bland vasculopathy)、血栓性微小血管症、腎静脈血栓症などの血管性病変が生じうる。一般的に血管炎の治療はこれまで述べたループス腎炎の治療と同様である。
Bland vasculopathyは高血圧とよく関連するが、SLEか高血圧かどちらが先か明らかでない。血栓性微小血管症は血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)と関連しうる。血栓性微小血管症に対しては原則として血漿交換療法を推奨する(level C)。
参考:大阪大学医学部 免疫アレルギー内科
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