眼底検査の目的・方法・診断

Fundus of eye normal
眼底検査は簡易に侵襲なく行うことができ、緑内障や糖尿病性網膜症、網膜剥離などの疾患を発見できる。症状が進行するまで現れない緑内障や糖尿病性網膜症を早期発見できることは眼底検査の意義がある。

●眼底検査の目的

瞳孔(黒目)の奥にある眼底には網膜があり、その網膜を見ることによって様々な疾患を早期に発見できる。緑内障や網膜剥離などは視神経乳頭や網膜の状態で診断できる。また、網膜の血管は体の中で唯一非観血的に直接見ることができるため、高血圧や糖尿病などの状態も把握して失明する前に治療することができる。

●眼底検査の方法

眼底検査には2つの方法があり、眼底鏡による検査と眼底カメラによる検査に分かれる。

・眼底鏡による検査

Ophthalmoscopy
眼底鏡を使って照明を当てながら医師が診察する検査法。

・眼底カメラによる検査

OCT Optical Coherence Comography camera Topcon 3D OCT 2000
眼底写真を撮る器械を用いて写真として撮影する方法。
健康診断などでは散瞳薬を使わずに撮影して大まかに異常がないかを見つけ、眼科では散瞳薬を使って撮影して周辺まで詳細に見ることで見逃しを防ぐ。
散瞳薬を使うと瞳孔が開くため検査は見やすいが、近くのものはピントが合わなくなって見えにくく、また明るいところではまぶしく感じる。自然放置では数時間で回復するが、縮瞳薬を使うと早く改善する。

●眼底検査の見方

正常眼底像をまず把握する。
右眼は右側に視神経乳頭、左眼は左側に視神経乳頭がある。
網膜細動脈・静脈は右眼で右側にある上鼻側動脈・静脈、下鼻側動脈・静脈、左側にある上耳側動脈・静脈、下耳側動脈・静脈の4つの領域に分布している。
動脈径︰静脈径は2︰3
視神経乳頭の網膜視神経線維の集まった部位(リム)の幅︰下方>上方>鼻側>耳側
加齢と共に、白く輝いて見える網膜反射(黄斑部輪状反射、中心窩反射)の消失、網膜色素上皮の色素の減少を認める。

●緑内障

・原因

眼球の内部を満たしている房水という液体が増え、眼圧が高まり、視神経乳頭が圧迫される。

・症状

視野の一部が見えなくなる。

・眼底検査

Glaukompapille2
視神経乳頭のくぼみ(陥凹部)が広がる。(視神経乳頭陥凹拡大)

・他の検査

眼圧検査、視野検査を行う。

・治療

点眼薬、レーザー治療、手術など。

●網膜剥離

・原因

眼球内部を満たす硝子体が加齢によりゼリー状から液状化に変化し、眼球の動きに引っ張られて網膜が剥がれる。加齢や外傷によることが多い。

・症状

飛蚊症(小さなゴミのようなものが見える)、光視症(稲妻のような光が走る)、視野が狭くなる、視力が低下する

・眼底検査

網膜が剥がれている。ただし人間ドックなどの無散瞳の眼底検査では網膜周辺部は見えないことが多い。

・治療

レーザー治療、手術など。

●脳腫瘍、くも膜下出血、水頭症などによるうっ血乳頭

・原因

脳腫瘍、くも膜下出血、水頭症などで頭蓋内圧が亢進し、視神経乳頭がむくんで充血する。

・症状

頭蓋内圧亢進により頭痛や嘔気などの症状があることが多い。
進行すると視力が低下する。

・眼底検査

Papilledema
視神経乳頭は境界不鮮明で発赤・混濁・腫脹する。

・他の検査

頭部CT検査、頭部MRI検査などを行う。

・治療

頭部の手術など。

●糖尿病性網膜症

・原因

糖尿病により高血糖状態が長く続くと、網膜の血管が脆くなり、コブができたり(動脈瘤)、出血したりする。

・症状

長い期間症状がなく、突然失明する。
飛蚊症(小さいゴミのようなものが見える)の症状が出ることもある。

・眼底検査

Proliferative Retinopathy
血管のコブ(血管瘤)や小さな出血(点状出血・斑状出血)、蛋白質や脂肪が血管から漏れ出て網膜に白いシミ(硬性白斑)を形成する。
進行すると、新生血管が現れ、硝子体出血や網膜剥離を引き起こす。

判定 Davis分類 Scott分類 眼底所見
A 網膜症なし 網膜症なし 異常なし
D 単純網膜症 Ia 毛細血管瘤
点状出血
Ⅲa しみ状出血、大型滲出物
Ⅲb 出血斑と滲出物の増加
増殖前網膜症 Ⅰb 網膜内出血、数珠状静脈、網膜内細小血管異常
増殖網膜症 Ⅳ・Ⅴa・Ⅴb・Ⅵ 新生血管、硝子体・網膜前出血、網膜剥離

・他の検査

蛍光眼底造影検査など。

・治療

血糖コントロール、網膜光凝固、手術など。

●高血圧性眼底、高血圧性網膜症

・原因

高血圧により眼底の動脈が細くなったりくびれたりし、出血などを起こす。

・症状

長い期間症状がなく、突然失明する。

・眼底検査

網膜の動脈が細くなったり(細動脈の狭細)、血液や血液の成分が浸出する(出血や白斑)。
細動脈狭細︰細動脈のびまん性狭細
管径不整︰細動脈の限局的狭細
反射︰細動脈の血柱反射の亢進
走行変化︰交差部の静脈の不自然な迂曲
管径変化で交差部の静脈の先細り
隠伏︰交差部の静脈が途切れてみえる
細動脈狭細は乳頭縁から1乳頭径の間で判定する。
動静脈交差現象は乳頭縁から1乳頭径以内に現れた所見はとらない。
管径不整、出血、白斑、反射は眼底全体を見て判定する。

 判定 Keith-Wagner分類 Scheieの分類

高血圧性変化(H)

Scheieの分類

細動脈硬化性変化

A 0 所見なし 所見なし 所見なし
B 細動脈の軽度の狭細・硬化 細動脈の狭窄化、口径不同なし 動脈血柱反射の亢進、軽度の交差現象
C Ⅱa:動脈硬化明らか、狭細もⅠより高度 動脈狭細化著明、口径不同あり Ⅰ度の所見が著明
D Ⅱb:Ⅱに加え、動脈硬化性網膜症(出血・白斑)
著名な動脈硬化+血管攣縮性網膜症、網膜浮腫、綿花状白斑、著しい動脈狭細化 狭細化と口径不同が高度、出血、白斑 銅線動脈、強い交差現象
Ⅲに加え、乳頭浮腫 Ⅲに加え、乳頭浮腫 銀線動脈

Keith-Wagner分類1-2度相当の所見(細動脈狭細、交叉現象、反射亢進の存在)では脳卒中などの循環器疾患の発症の危険が約2倍まで、3度相当の所見(高血圧性網膜症)では脳卒中などの循環器疾患の発症の危険が2倍以上に、さらに視神経乳頭浮腫があれば循環器死亡の危険が高い。

・治療

血圧コントロール、網膜光凝固、手術など。

●加齢黄斑変性

・原因

加齢により網膜の中心部にある黄斑に新生血管ができ、黄斑が委縮したり水が滲出したりする。

・症状

視野の中心部分が暗く見えにくくなる。(中心暗点)
ものがゆがんで見える。(変視症)
進行すると、視力が徐々に低下する。

・眼底検査

黄斑部に網膜下出血がみられる。

・他の検査

蛍光眼底造影検査、光干渉断層計など。

・治療

網膜光凝固、抗VEGF薬の注射、光線力学的療法など。

●その他の疾患と眼底所見

・近視

網膜色素上皮の色素が少ないため、脈絡膜の色素や血管網が透けて見え、豹紋状眼底(豹理状眼底)を呈する。視神経のそばの網膜が引き伸ばされて萎縮し、周囲が白く見える。(近視性コーヌス)

・白内障

水晶体が濁り、白いもやがかかって見える。

・硝子体混濁

老化により硝子体に白斑が散在する。

・黄斑円孔

黄斑部の中心の網膜に穴が開いて、視力が低下し視野の中心が見えなくなる。

・網膜色素変性症

網膜の周辺部から次第に変性していく遺伝性疾患。夜盲と視野狭窄を伴う。網膜全体が灰色に濁り、周辺部に骨小片様の黒色の色素が見られる。

・原田氏病

両眼性急性脈絡膜炎を起こす。色素上皮の脱色素が起こり、眼底は明るく赤色調となり夕焼け眼底と呼ばれる。

・網膜中心静脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症

網膜の静脈に血栓ができて詰まり、網膜に出血を起こす。視神経内で静脈が詰まったものを網膜中心静脈閉塞症、網膜内の分枝が詰まったものを網膜静脈分枝閉塞症という。通常は片眼だけに起こる。網膜中心静脈閉塞症では、静脈の拡張、蛇行、出血、軟性白斑が見られる。網膜静脈分枝閉塞症では、出血や硬性白斑が見られる。

●網膜出血の種類と形

・網膜前出血で不規則な形の出血︰増殖糖尿病性網膜症など
・網膜表層の出血で線状・火焔状出血︰高血圧性出血
・網膜表層の出血で線状・火焔状出血が扇形になる︰網膜静脈分枝閉塞症
・網膜下出血で境界がはっきりした暗赤色の出血︰加齢黄斑変性症

●白斑及び白斑類似所見の違い

・硬性白斑︰網膜深層の点状ないし斑状の帯黄白色の斑点、毛細血管から漏出した血液成分からなる沈着物
・軟性白斑︰網膜表層の境界不鮮明な綿花様の白斑、前毛細血管細動脈の閉塞により虚血に陥った神経が腫大したもの
・硝子体混濁︰硝子体にでき、大きさや形が不規則で目を動かすと揺れ動く、硝子体の無色透明な線維が濁ったもの(老化現象)
・網膜有髄神経線維︰網膜表層の、刷毛ではいたような羽毛様白色斑、視神経の髄鞘(先天異常、視神経は正常)
・ドルーゼン︰ブルフ膜の点状ないし斑状の帯黄白色の斑点、ブルフ膜が疣状に肥厚したもの(老化現象)

参考文献:
眼底健診判定マニュアル
健診での眼底検査の手技
健診のための眼底検査

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