●症状
尿意切迫感を必須とした症状症候群であり、通常は頻尿と夜間頻尿を伴うものである。切迫性尿失禁注は必須ではない。
OABは症状症候群であり、その診断のために局所的な病態(膀胱腫瘍、膀胱結石、尿路感染など)を除外する必要がある。
40歳以上の日本人におけるOABの実数は810万人と推定される。
●病因
1.神経因性
1)脳幹部橋より上位の中枢の障害
脳血管障害、パーキンソン病、多系統萎縮症、認知症(痴呆)、脳腫瘍、脳外傷、脳炎、髄膜炎
2)脊髄の障害
脊髄損傷、多発性硬化症、脊髄小脳変性症、脊髄腫瘍、頸椎症、後縦靱帯骨化症、脊柱管狭窄症、脊髄血管障害、脊髄炎、二分脊椎
2.非神経因性
1)下部尿路閉塞
2)加齢
3)骨盤底の脆弱化
4)特発性
●診断と治療のアルゴリズム
OABと同様な症状を示す疾患を除外診断することが大切である。同時にOABの原因疾患の中に、より適切な治療のために一度は専門医の診察を受けるべきもの(前立腺肥大症、神経疾患によるOAB)があることに注意する。
1.神経疾患(脳血管障害・脊髄障害など)の既往を除外
→既往ありなら専門医へ
2.検尿で血尿・膿尿ないことを確認
→血尿なら尿路結石、尿路悪性腫瘍、膿尿なら膀胱炎、前立腺等を鑑別し治療
3.腹部エコーで残尿が少ないことを確認
→残尿多く(50ml以上)、OABの症状と排尿障害(尿勢の減弱、尿線の途絶、腹圧排尿)合併患者は前立腺肥大を疑い、PSA採血、α1ブロッカー投与
4.抗コリン薬投与
→改善がみられない場合は専門医へ
●検査
・採尿:血尿・膿尿の有無を確認
・採血(腎機能、PSA):50歳以上の男性には年1回はPSA採血を行う
・腹部超音波検査:
横断面でa(cm):横径,b(cm):深さ、縦断面でc(cm):縦径を測定
残尿=π/6(0.5)・a・b・c (ml)
常に50~100ml以上残尿があれば専門医にコンサルトへ
●過活動膀胱症状質問票(OABSS)
以下の症状がどれくらいの頻度でありましたか。この1週間のあなたの状態にもっとも近いものを、ひとつだけ選んで、点数の数字を○で囲んで下さい。
1.朝起きた時から寝る時までに、何回くらい尿をしましたか
0:7回以下 1:8~14回 2:15回以上
2.夜寝てから朝起きるまでに、何回くらい尿をするために起きましたか
0:0回 1:1回 2:2回 3:3回以上
3.急に尿がしたくなり、我慢が難しいことがありましたか
0:なし 1:週に1回より少ない 2:週に1回以上 3:1日1回くらい 4:1日2~4回 5:1日5回以上
4.急に尿がしたくなり、我慢できずに尿をもらすことがありましたか
0:なし 1:週に1回より少ない 2:週に1回以上 3:1日1回くらい 4:1日2~4回 5:1日5回以上
「OABSSの質問3の尿意切迫感スコアが2点以上、かつ、OABSSが3点以上」が推奨される。これは、「1日の排尿回数が8回以上、かつ、尿意切迫感が週1回以上」にも相当する。
OABSSをOABの重症度判定基準として用いる場合は、合計スコアが5点以下を軽症、6~11点を中等症、12点以上を重症とすることが推奨されている。
●除外診断
1.膀胱の異常:膀胱癌、膀胱結石、間質性膀胱炎(膀胱痛症候群)
2.膀胱周囲の異常:子宮内膜症など
3.前立腺・尿道の異常:前立腺癌、尿道結石
4.尿路性器感染症:細菌性膀胱炎、前立腺炎、尿道炎
5.その他:尿閉、多尿、心因性頻尿、全身性疾患(糖尿病、心不全など)、行動や身体機能の異常、アルコールやカフェイン摂取などの生活習慣、薬剤の副作用など
●治療
抗コリン薬を投与する。緑内障がないことを確認する。
・バップフォー(プロピベリン塩酸塩) 10~40mg 分1
抗ムスカリン作用+カルシウム拮抗作用
すべてのムスカリン受容体に親和性あり作用強い。口渇、便秘の副作用がやや強い。
・ポラキス(オキシブチニン塩酸塩) 6~9mg 分3
抗ムスカリン作用+平滑筋の直接弛緩作用と麻痺作用
口渇などの副作用強い。半減期短いため1日3回投与が必要。
・デトルシトール(酒石酸トルテロジン) 4mg 分1
非選択性のムスカリン受容体拮抗薬だが徐放剤であり、副作用少ない。
・ベシケア(コハク酸ソリフェナシン) ODあり 5~10mg 分1
血漿中半減期が長く、このため有効性が持続し副作用発現率が低い。
・ウリトス、ステーブラ(イミダフェナシン) ODあり 0.1~0.4mg 分2
比較的膀胱選択性が高いが、バップフォーやデトルシトールほど唾液腺に親和性が高くなく、マイルドな抗コリン薬。4錠まで増量可能
ベシケア、バップフォーから開始し、効かなければウリトスに変更して増量する。
●I-PSS(国際前立腺症状スコア)
自覚症状
まったくなし 5回に1回未満 2回に1回未満 2回に1回 2回に1回以上 ほとんど常に
①最近1ヶ月間、排尿後にまだ尿が残っている感じがありましたか?
0点 1点 2点 3点 4点 5点
②最近1ヶ月間。排尿後2時間以内にもう一度行かなければならないことがありましたか?
0 1 2 3 4 5
③最近1ヶ月間。排尿途中に尿が途切れることがありましたか?
0 1 2 3 4 5
④最近1ヶ月間。排尿をガマンするのがつらいことがありましたか?
0 1 2 3 4 5
⑤最近1ヶ月間。尿の勢いが弱いことがありましたか?
0 1 2 3 4 5
⑥最近1ヶ月間。排尿開始時にいきむ必要がありましたか?
0 1 2 3 4 5
⑦最近1ヶ月間。床についてから朝起きるまで普通何回排尿に起きましたか?
0(0回) 1(1回) 2(2回) 3(3回) 4(4回) 5(5回)
「最近1ヶ月間の排尿状態に該当する各自覚症状の点数を合計して重症度を診断します」
症状の程度:
0~7点・・・・・・・・・軽い (1期)
8~19点・・・・・・・・中程度(2期)
20~35点・・・・・・・重い (3期)
●尿流測定:
軽症; 最大尿流率15ml/秒以上かつ残尿50ml未満
中等症; 最大尿流率5ml/秒以上かつ残尿100ml未満
重症; 最大尿流率5ml/秒未満または残尿100ml以上
自宅での評価の参考
正常:20-25秒程度
排尿障害:常に30秒以上
●腹部超音波検査
前立腺を横断面でa(cm):横径,b(cm):深さ、縦断面でc(cm):縦径を測定
前立腺容積=π/6(0.5)・a・b・c (ml)
軽症;20ml未満
中等症;50ml未満
重症;50ml以上
●前立腺肥大症
α1ブロッカーを投与する。
• フリバス、アビショット(ナフトピジル) 25~75mg 分1
• ハルナール(タムスロシン) 0.2mg 分1
• ユリーフ(シロドシン) 8mg 分2
前立腺に対する選択性が高く作用が強力。効果発現も早く、残尿などによる頻尿や尿が我慢できないなどの蓄尿症状も改善する。一方で、射精時の精液量減少の副作用が高頻度でみられる。
過活動膀胱(overactive bladder;OAB)

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