腹診、脈診、舌診

●腹診
・腹力(ふくりょく)、実証(じっしょう)、虚証(きょしょう)
腹力強(実証):
腹部が全般的に膨満していて、腹に弾力がある。大黄を含む製剤や、黄連、梔子などの冷性薬を含む製剤の大部分がここに入る。大柴胡湯、柴胡加龍骨牡蛎湯、小柴胡湯、大黄牡丹皮湯、大承気湯、小承気湯、桃核承気湯、桂枝茯苓丸、防風通聖散、黄連解毒湯など。
腹力中等度(虚実間):
柴胡加龍骨牡蛎湯、小柴胡湯、柴胡桂枝湯、柴胡桂枝乾姜湯、桂枝茯苓丸、加味逍遥散、釣藤散、補中益気湯、十全大補湯など。
腹力弱(虚証):
柴胡桂枝乾姜湯、桂枝加芍薬湯、小建中湯、四逆散、補中益気湯、釣藤散、当帰芍薬散、四君子湯などの温性薬を中心とする処方。
腹力に関わらない:安中散、芍薬甘草湯、疎経活血湯
・心下痞鞭(しんかひこう)
所見:心下がつかえるという自覚症状(心下痞)と同部位に抵抗や圧痛を認める。自覚的なつかえ感がなくて同部の抵抗・圧痛を認めることは多い。上部消化管病変、胸腔内病変などと関連がある。瀉心湯類、人参湯類、柴胡剤類、参耆剤を用いる。
処方:半夏瀉心湯、生姜瀉心湯、甘草瀉心湯、三黄瀉心湯、黄連解毒湯、人参湯、桂枝人参湯、人大建中湯、六君子湯、四君子湯、茯苓飲参養栄湯、補中益気湯、十全大補湯、木防已湯など
・胸脇苦満(きょうきょうくまん)
所見:季肋下部に抵抗ならびに圧痛を認める。乳頭と臍とを結ぶ線が季肋下部と交差する部分に三指を乳頭の方へ向けて圧入すると、抵抗があって指が入りにくい。そしてさらに圧入すると、疼痛あるいは不快感を感じる。8~9割が右に証明され、左に証明されるのは1~2割である。喘息、肝臓や胆道の病気、うつ病などに見られることが多い。柴胡剤を用いる。柴胡の作用には抗炎症作用や精神緊張の緩和作用がある。
処方:大柴胡湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、四逆散、小柴胡湯、柴胡桂枝湯、柴胡桂枝乾姜湯など
・胃内停水(いないていすい)、宿飲停水(しゅくいんていすい)、胃部振水音
所見:上腹部を叩打すると水の揺れる音が聞こえる症状。胃腸の水分代謝が悪くなり、胃の中に過剰の体液が貯留した状態である。水滞(水毒)を示す腹候である。患者の膝を曲げさせて診察する。咳嗽・吐き気・めまいなどの原因となる。振水音が認められる患者には、消化器に負担をかけやすい麻黄、地黄などを含む薬方は第一選択としては避けたほうがよい。
処方:小青竜湯、人参湯、六君子湯、茯苓飲、真武湯、五苓散、苓桂朮甘湯、半夏白朮天麻湯、当帰芍薬散などを用いる目標。
・腹直筋攣急(ふくちょくきんれんきゅう)、腹皮拘急(ふくひこうきゅう)
所見:腹直筋が過度に緊張した状態をいう。通常は両側対称性であるが、左右どちらかにとくに強く出ることもある。また上部が緊張していて、下部が緊張していないものもある。痩せ型に多く、病的なほどの精神的緊張を示す。
処方:芍薬甘草湯、小建中湯、黄耆建中湯、四逆散、柴胡桂枝湯、桂枝加芍薬湯を用いる。
・小腹不仁(しょうふくふじん)、臍下不仁(さいかふじん)
所見:下腹部が軟弱無力で、圧迫すると腹壁が容易に陥没し(典型的には船底型)、按圧すると指が腹壁に入る。通常圧痛及び自発痛は認めない。臍下の腹力が臍上のそれに比べて明らかに弱い場合も所見にとる。著しい場合は知覚鈍麻を合併し、正中芯を触れることがある。腎虚を示す腹候である。足腰や下半身の弱い人、手足が冷える人、高齢者などによくみられる。
処方:八味地黄丸、牛車腎気丸、六味丸(若年者で用いる)など
・正中芯(せいちゅうしん)
所見:腹部正中線上の皮下に索状物を触れる。臍上と臍下の両方にあるものと、臍下だけにあるものとがある。通常、按圧しても痛みはない。小腹不仁に合併して見られることが多く、臍上は脾虚、臍下は腎虚の腹候である。
処方:臍下のみの正中芯は八味地黄丸、臍上のみの正中芯は人参湯、四君子湯、臍上から臍下に続く正中芯は真武湯の使用目標とされる。
・瘀血の圧痛点=臍傍圧痛(せいぼうあっつう)、回盲部圧痛、小腹急結(しょうふくきゅうけつ)
所見:臍周囲に出現する圧痛(臍傍圧痛)や回盲部を指頭で軽く触診した場合にみられる腹壁筋の硬結とこの部を圧迫した際に現れる放散痛(回盲部圧痛)、左腸骨窩を指先で擦過するだけで急迫性の疼痛を生じるもの(小腹急結)などが見られる。瘀血病態の存在を示唆する。
処方:桂枝茯苓丸、当帰芍薬散、大黄牡丹皮湯、桃核承気湯などの駆瘀血剤を用いる。
・心下悸(しんかき)、臍上悸(せいじょうき)、臍下悸(せいかき)
所見:心下悸は心窩部で、臍上悸は臍上部、臍下悸は臍下部で腹部大動脈の拍動を触れる。気逆を示す腹候である。
処方:柴胡加竜骨牡蠣湯、桂枝加竜骨牡蠣湯、柴胡桂枝乾姜湯、苓桂朮甘湯、炙甘草湯、五苓散、加味逍遙散、抑肝散加陳皮半夏、当帰芍薬散などを用いる目標。
・腸の蠕動亢進(蠕動不穏)
所見:腹部が軟弱無力で腸管の動きが外から望見できるもの。
処方:大建中湯が適合する場合が多い。
・皮膚が柔らかできめが細かく、汗ばみやすい:
防己黄耆湯、黄耆建中湯など
・肌が乾燥してカサカサした状態:
四物湯類、六味丸、八味地黄丸、など地黄が入った薬方で滋潤する。
●脈診
・弦脈
所見:弓を張ったような緊張の強い脈
処方:柴胡剤など
・手掌発汗
所見:手足が冷たく汗をかいている状態
処方:四逆散など
●舌診
・歯痕舌
所見:舌縁に歯の痕がついている状態、気虚+水滞の状態、心療内科受診患者に多い、多忙と時間切迫性に関連する
処方:六君子湯など
・梅核気(ばいかくき)、咽中炙臠(いんちゅうしゃれん)
所見:咽喉部の引っかかるような違和感。咽喉頭異常感症。吐こうとしても飲み込もうとしてもとれず、梅の種があるような感じに似ているところからこの名が付いた。
処方:半夏厚朴湯、香蘇散、柴朴湯、麦門冬湯、柴胡加竜骨牡蛎湯
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