●概念
ベロ毒素 (Verotoxin=VT) 、または志賀毒素 (Shigatoxin=Stx) と呼ばれている毒素を産生する大腸菌である。腸管出血性大腸菌による感染は、べロ毒素産生性の腸管出血性大腸菌で汚染された食物などを経口摂取することによっておこる腸管感染が主体である。また、ヒトを発症させる菌数はわずか50個程度と少なく強毒性を有するため、二次感染が起きやすく注意が必要である。また、この菌は強い酸抵抗性を示し、胃酸の中でも生残し腸に達する。牛肉、生野菜、魚介類での感染が多い。
●ベロ毒素産生菌
O1、O2、O4、O5、O18、O25、O26、O55、O74、O91、O103、O104、O105、O111、O113、O114、O115、O117、O118、O119、O121、O128、O143、O145、O153、O157、O161、O163、O165、O172などがある。そのうち、O157によるものが全体の約80%をしめる。
●症状
腸管出血性大腸菌は、無症状や軽度の下痢から、激しい腹痛・頻回の水様便・著しい血便などとともに重篤な合併症を起こし死に至るものまで、様々である。感染患者に、性別・年齢等有意な差はない。
感染の機会のあった者の約半数は感染から3-5 日の潜伏期の後に激しい腹痛をともなう頻回の水様便となる。多くは発症の翌日ぐらいには血便となる(出血性大腸炎)。ほかの経口感染症(サルモネラ、腸炎ビブリオなど)と比べると吐き気や嘔吐はみられないことが多く、あっても程度は軽い。発熱は一過性で軽度(37 ℃台)である事が多い。血便になった当初には血液の混入は少量であるが次第に増加し、便成分の少ない血液がそのまま出ているような状態になる。
有症者の6-7%は下痢などの初発症状発現の数日-2週間(多くは5-7日後)以内に、溶血性尿毒症症候群(Hemolytic Uremic Syndrome, HUS)や脳症などの重篤な合併症が発症する。溶血性尿毒症症候群を発症した患者の致死率は1-5%とされている。重症合併症の危険因子としては、乳幼児と高齢者及び血便や腹痛の激しい症例が挙げられているが、それ以外でも重症合併症が起こる可能性がある。小児でHUSになりやすい原因は、不潔、集団、消化管防御機能低下などが考えられている。

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